懐中電灯を片手に訪問診療
 同クリニックは計画停電の実施が決まってから、在宅で人工呼吸器や痰の吸引器、在宅酸素を使う患者の対応に追われた(表1)。人工呼吸器や吸引器を使う患者に対しては、予備のバッテリーや充電式の機器を準備。最悪の場合に備えて、バッグバルブマスクや、ネラトンカテーテルに注射器をつないだ手動式の吸引器も用意した。院長の新田國夫氏は「バッテリーへの切り替えなどは家族やヘルパーに説明し、実際に経験させた。中には不安がる人もいたので大変だった」と振り返る。

表1 診療所や在宅における停電時の主な対処法(編集部まとめ)

 同クリニックは停電中も診療を続けているが、自家発電装置がないため日没後は真っ暗な診療所内でスタッフが懐中電灯片手に業務を行っている。「在宅も含め、患者の大部分は懐中電灯と聴診器一本があれば診察できる。ただ、急性疾患への対応は難しい」と新田氏は話す。

 実際、訪問診療を行っている70歳代の男性患者が停電中に熱発し、往診依頼を受けた。「呼吸不全を呈し、胃穿孔、急性壊疽性胆嚢炎の疑いがあったが、クリニックでは胸腹部のX線検査ができないため診断できず、近くの病院に送った」と言う。男性患者は、その日のうちに緊急手術となった。

 計画停電で医療機関の機能は限定され、スタッフの負担は増すばかり。東京電力は電力供給能力の改善を図る方針だが、電力需要が高まる夏季には23区も対象となる恐れもある。計画停電は、長引けば長引くほど人命に関わる事態に発展しかねず、停電対象の医療機関は戦々恐々としている。