*本記事は4/10発行の日経メディカル4月号に掲載予定の記事です

 震災に伴う電力供給能力の低下で、東京電力管内の1都8県では計画停電が始まった。多くの医療機関ではMRIやCT、電子カルテなどが使えなくなり、急性期への対応が難しくなっている。


 東日本大震災の余波は、被災地の外の医療機関にまで及んだ。震災で東京電力・福島第1原子力発電所などが甚大な被害を受け、同社の電力供給能力が大幅に低下。同社は3月14日から、1都8県(東京23区は原則対象外)を5つのグループ(3月28日現在は25グループ)に分け、午前6時20分から午後10時までの7つの時間帯で、電力需給に応じて輪番で3時間程度の停電を行う計画停電をスタートさせた。しかし、停電対象のグループや時間帯が発表されるのは、基本的に前日。一部の病院は特例的に停電の対象から外されているが、多くの医療機関は、翌日、どの時間帯に停電が行われるか分からない中、連日手探りの対応に追われた。

停電が病院経営も圧迫
 東京都によると、都内の全病院のうち自家発電装置を備えているのは半数以上(図1)。自家発電装置を持つ診療所はさらに少ない。その上自家発電装置は、突然の停電に備える緊急用。計画停電のような頻回の停電は想定されていない。自家発電装置の規模や性能、各医療機関の設定によって稼働時間や配電範囲は異なるが、多くの医療機関では停電中、消費電力の多いMRICTなどの検査装置、電子カルテ、エレベーターなどが使えない。

図1 都内の病院の停電対策(東京都調べ)
計画停電の実施を受け、東京都は都内の全646病院に対してアンケートを行った。回答のあった535病院のうち、78.9%に当たる422病院が自家発電装置を持っていた。ただし、稼働時間は3時間未満から24時間以上まで様々だった。

 2次救急を担い、災害拠点病院にも指定されている西新井病院(東京都足立区、317床)は、23区内ではあるものの区内の一部が計画停電の対象となっており、震災後2週間で数回の停電を経験した。同病院には最大8時間稼働する自家発電装置があるが、供給できる電力に限りがあるため、停電中はMRIやCT、X線撮影装置などが使えない。事務長の伊藤基光氏は「問診や処方箋を出すぐらいしかできないため、停電中は外来でも救急でも受けられる患者が限られてしまう」と頭を抱える。

足立区の西新井病院は、計画停電時に一部の検査ができなくなる旨を掲示した。

 また、手術室は停電中でも通常通り使えるものの、手術前後のMRIやCTが実施できない上、オートクレーブが使えず手術器具が滅菌できない。前日にならなければ停電する時間帯がはっきりしなかったこともあり、同病院は震災後、脳外科や消化器科、眼科などで予定していた手術をすべてキャンセルした。伊藤氏は、「今のようなやり方での計画停電が長期間続くと、病院経営自体も苦しくなる」と明かす。

 千葉県松戸市を中心に、法人全体で1日500人以上の人工透析を行う医療法人財団松圓会。拠点の一つである東葛クリニック病院(松戸市)も、震災後2週間で数回の停電に見舞われた。同病院は約48時間稼働する自家発電装置を備えている。しかし、透析装置も透析患者も多く、自家発電の電力だけで賄うのは難しい。また、停電中は、電子カルテもエレベーターも使えない。

 そこで同病院は計画停電が始まって以降、停電の予定時間を外して人工透析を実施。スタッフは朝6時から透析の準備や回診などに追われ、夜中の1時まで透析を行うこともあった。また、透析時間も通常の4時間から3〜3.5時間に短縮。「できることなら短時間透析は避けたいが、透析中に停電が起きないようにするにはやむを得ない」と副院長の秋山和宏氏は話す。さらに、停電中は電子カルテも使えなくなるため、停電前に予約患者の診療録などを出力し、診察後に再び電子カルテに入力。エレベーターが使えないため停電中の配膳はスタッフ総出で手渡ししている。

 計画停電の影響は、診療所や在宅医療にも及んでいる。80人程度の訪問診療患者を抱える新田クリニック(東京都国立市)は震災後2週間、頻繁に計画停電を経験した。