アメリカ疾病予防管理センター(CDC)が、2004年のインド洋津波の復旧経験などを受けて作業をどのように安全に進めていくべきかをまとめたリポートなどを基に、北里大学医学部衛生学公衆衛生学講師の和田耕治氏らが地震や津波が起こった際の対処方法を自身のWebサイトに掲載している。日経メディカル オンラインでは、同氏の許可の下、同サイトを編集、転載させていただいた。


 洪水の復旧作業には様々な危険が伴うことを認識しましょう。
 復旧に関わる人や外部からのボランティアの方は経験や体力に差があることを認識し、お互いに安全が確保できるようにすることが求められます。
 復旧作業は中長期的に続くことを認識し、精神面、身体面の障害を予防しましょう。

1.感電に注意しましょう
(1)洪水時、近くに水がある場所で高電圧の電気機器があると、感電のおそれがあり、危険です。主電源(ブレーカー等)を切り、その後は専門家による安全の確認がなされるまで、電源を入れないようにしましょう。
(2)発電機を使用する場合、起動する前に電源を入れておくと感電の恐れがあるので、電源を切っておきましょう。
(3)切れた電線の付近の作業は感電の危険性が高いので、急務でなければ、専門家に任せましょう。

2.一酸化炭素中毒を未然に防ぎましょう
 洪水時の復旧活動では発電機を使用する機会が多いですが、これらの機器は一酸化炭素を発生させる恐れがあります。一酸化炭素は吸引することで致死的な一酸化炭素中毒を引き起こします。発電機を含む、ガソリンを使用する機器は必ず屋外で用いるようにしましょう。

3.筋骨格系の障害を予防しましょう
 洪水時の復旧作業は重量物の運搬作業が多く、手、腰、膝、肩を痛める危険があります。特に重量物の運搬では、腰痛に対する注意が必要で、こうした事を未然に防ぐため、重量物は2人以上で協力して運搬すること。可能であれば運搬用機械を用いるようにしましょう。

4.しっかりした防寒を行いましょう
 冷たい水に浸かっての作業は低体温を引き起こします。低体温を予防するためには、ゴム長靴、しっかりした防寒着の着用が推奨されます。また、湿った着衣は体温を奪うため、気を付けましょう。人目のあるところで作業をする、水面から離れて、しっかり休息をとるといった事も重要です。

5.重機の取り扱いは専門家に依頼しましょう
 不慣れな人、資格を持たない人が重機を取り扱うことは、二次災害につながる恐れがあります。重機の取り扱いは必ず専門家に依頼しましょう。

6.周囲の地盤、建物の安全性を過信しないようにしましょう
 洪水によって、地盤、道路、建物は強度が弱っている可能性があり、一見、安全に見えても、崩壊の恐れがあります。むやみに立ち入らないようにしましょう。

7.有害物質に注意しましょう
 洪水時に溢れた水には、タンク、ドラム、パイプなどから漏れ出た農薬や有機溶剤などが含まれている可能性があります。内容物のわからない容器にむやみに触れないようにしましょう。もし、内容物に触れたら、しっかりと洗浄し、何らかの症状が出た場合は、早急に医療従事者に連絡しましょう。

8.火災に注意しましょう
 洪水が起きた後は、消防用水の不足などから、火災が起きた際に十分な消火活動ができない可能性があります。復旧作業を行う際は、できる限り、消火器などを準備したうえで行いましょう。

9.溺水に注意しましょう
 泳力に自信がある人でも、災害時の水たまりなどの中では溺水する恐れがあります。水がある場では、一人作業を避け、ライフジャケットを着用しましょう。また、乗り物の中で、脱出できずに溺水する可能性もあります。深さのわからない場所では、車や重機を運転しないようにしましょう。

10.軽微なけがもしっかり初療を行いましょう
 軽微なけがや、やけどでも、汚染された水に暴露されると感染の危険があります。すべての傷をきれいな水とせっけんで洗った上で、早期に医療従事者に相談しましょう。破傷風の予防接種は特に重要です。

11.十分な保護具を準備しましょう
 二次災害を防ぐため、保護具の着用を心がけましょう。ヘルメット、ゴーグル、手袋、安全靴、耳栓など。

12.閉鎖空間での作業の危険性を認識しましょう
 ボイラー、炉、パイプライン、ピット、浄化槽、下水槽、貯蔵タンクなどの閉鎖空間で作業をする際にはその危険性を認識する必要があります。出入り口が限られていること、換気が悪いこと、スペースが狭いことなどが挙げられます。有害ガスの充満による窒息、ガス爆発なども考えられるので、不用意に近づかないようにしましょう。作業の必要があれば、専門家に依頼しましょう。

13.精神、身体面の疲労に気を付けましょう
 災害発生時は、精神的な負担と身体的な負担が合わさり、ストレスに起因する疾患やけがの発症の可能性が高まります。家族、近隣住民と支えあい、可能であれば、精神衛生の専門家と相談することがこれらの予防につながります。作業の優先順位をつける事、しっかりと休養をとることなども重要です。

謝辞:産業医科大学 産業医実務研修センター尾土井 悠先生にご尽力いただきました。