経済支援や施設基準の緩和を
 医療従事者の退職は、やはり福島第一原発近くの地域で顕著です。内陸の会津地域や県南地域は放射線の影響が少ないので退職者も少ない。一方で、県北や海側の相馬・双葉地域、いわき地域では徐々に退職者が増えています。

 夏休みを機に福島県外に転校する予定の小中学生が1160人いるという報道を目にしました(8月中旬のインタビュー時)。これまでに7600人が転校しているので、計8900人くらいの小中学生が県外に出ることになります。この中には、子どもを抱えた看護師も少なからずいるはずです。それだけ原発事故による放射性物質汚染を心配している人がたくさんおり、それは病院運営に長期的な影響を与える可能性があるということです。

 現在、原発から半径20km圏内で原則立ち入り禁止の警戒区域には7病院、半径20〜30km圏内で緊急時に屋内退避などが求められる緊急時避難準備区域には6病院があります。緊急時避難準備区域の6病院は、入院は受け入れていないが外来は実施しているなど多かれ少なかれ診療を再開していますが、警戒区域の7病院は再開どころか立ち入ることすらできません。

 ところが、原発事故による各病院への損害賠償はなかなか実行されず、警戒区域にある病院は全く収入のない状況が続いています。その上、現在特例措置として、多大な被害を受けた地域の事業所に雇用されていて、震災の被害で離職を余儀なくされた労働者には雇用保険の基本手当が給付されていますが、これは10月には終了してしまいます。その際に復帰したいと考えている職員を、収入がないために病院が再雇用できなければ、医療従事者の県外などへの流出がさらに加速しかねません。いずれ閉鎖する病院が出てくる可能性も大きい。こうした病院には一刻も早く、国が経済支援を実施してなんとか病院を存続できるようにしてほしいと思います。病院を買い上げ、新しい土地で診療できるようにすることも視野に入れて検討することが必要でしょう。

 何かしらの診療を再開しているとはいえ、医療従事者の退職が相次いでいる以上、緊急時避難準備区域の病院も長期的に厳しい状況に置かれています。そこで、福島病院協会では現在、厚生労働省に当面の施設基準の緩和を求めています。医療法に定める医師と患者の比率や看護職員の人数などを、少なくとも年単位で大幅に緩和する措置を講じてもらいたい。

 医療従事者の退職を止めるために色々と考えてはいますが、なかなか改善策が見当たりません。そもそも今後、放射性物質汚染がどれだけ続き、いつ収束するのか、警戒区域や緊急時避難準備区域などがいつまで設定されるのか―といったことがはっきりしない以上、医療現場では対策の打ちようがありません。国や原子力の専門家の間でしっかりと議論していってくれることを願います。