津波で全壊した大槌病院。

 「私はこの先生に診てもらいたい」とリクエストする避難所の患者まで出てきました。各地からの支援のおかげで医師数が充足しているという、ありがたい状況なんですが、長く続くと元の医療提供体制に戻しにくくなってしまう。6月19日をもって釜石医療圏から支援チームにすべて撤収してもらったのは時期的に正しい判断だったと思います。

被災した開業医たちも診療を再開
 全国の医師が医療支援に当たってくれている間、私は仮設診療所の開設を急ぎました。沖縄から来ていた支援チームのある医師から、「僕たちは一時的にこの地域にいるだけで、地元の先生たちが復活するまでの応援チームでしかありません。地元の先生たちが診療体制を整えたら引き揚げられるので頑張ってください」と言われたのです。「彼らを早く通常の仕事に戻してあげなければ」と思ったわけです。

大槌病院の1階は震災前の原型を全く残していない。

 そして5月6日、大槌川の上流地域に、知り合いの建物を借りて仮設診療所をオープンしました。大槌町の他の4人の開業医の先生たちも、既に2人が仮設診療所を開設し、残り2人も診療を近く再開する予定です。

 震災前に私が診ていた患者は1日70〜100人。今は50人ほどまで戻りました。医療支援チームが避難所で、開設した地元の診療所のリーフレットを配ってくれたので、順調に患者を引き継げていると思います。避難所では検査ができないので、きめ細かい診療は不可能です。その点、仮設でも診療所に通院してもらえれば一般的な検査ができます。避難所での「不安定な医療」から「普通の医療」が受けられるようになってきています。

 ただし大槌町の医療の核は、やはり大槌病院です。4月25日には、沿岸部の公民館に大槌病院の仮設診療所が開設されて巡回バスの運行も始まり、外来は再開されました。ところが、巡回バスは県道などの広い道にしか止まってくれず、足腰の弱い高齢者もそこまで歩いていかなければなりません。バスは通院のための大切な“足”なので、病院と各避難所の目の前を巡回してくれるよう町役場に頼んでいるのですが、なかなか改善してもらえず残念です。

7月に開設する大槌病院の新しい仮設診療所。

 また、大槌病院の今の仮設診療所ではX線や内視鏡などの検査ができません。幸い7月には大槌川の上流の新しい仮設診療所に移り、検査・診療はより充実する予定です(編集部柱:6月27日にオープン)。私自身も、今年中には今の仮設診療所を閉めて、新しい診療所をオープンしたいと思っています。既に土地は確保しています。さすがに沿岸の低地は避けて高いところにしました。さらに、X線CTの導入も検討しています。大槌病院の新しい仮設診療所にはCTを入れるスペースはありません。そこで私の新医院にCTを入れれば、大槌病院と機能分担が図れると考えたのです。

町内の入院機能を残してほしい
 私たち大槌町の診療所開業医は、大槌病院があってこそ成り立ってきたところがあります。今回の震災で大槌病院は全壊し、入院機能はいまだ復旧できていません。一日も早く入院機能を復活させてもらいたい。だからこそ、大槌病院の復活のために最大限のバックアップをしようと思っています。

 しかし岩手県は、大槌病院の入院機能を同じ医療圏の県立釜石病院に統合し、大槌町には外来機能だけ残そうと考えているのではないでしょうか。医師不足や財政難などを考慮すると致し方ないのかもれません。だとしても、釜石病院の機能をもっと充実させてほしい。現状は釜石病院も医師不足に直面しており、今よりさらに広域の患者を受け入れるのに十分な体制とはいえません。この地域での診療を希望してくれる若い医師が増えてくれればいいのですが…。