釜石医療圏の中核機関である岩手県立釜石病院は耐震補強工事を急ピッチで進めている

 震災以前においても、在宅医療を開始する際は、その患者の状態や在宅生活を送ろうとする意欲の程度、家族構成、経済力など様々な面についてアセスメントしてきました。今後はこれらに震災の影響を十分加味しなければなりません。アセスメントを担うのは、ケアマネジャーや病院のソーシャルワーカーといった人たちですが、医師はこうした人たちと今まで以上に密に連携しなければいけません。

 釜石医療圏では震災以前から釜石医師会が中心になり、医師や医療従事者だけでなく介護従事者も含めた会合を頻繁に開催してきました。このため、医療・介護従事者はみんな顔見知りという関係が築かれており、情報共有や意見交換といった連携がスムーズに行えるのが強みです。

 釜石医療圏の中核の急性期病院である岩手県立釜石病院は現在、耐震強度の問題で一般病床272床のうち246床を閉鎖しています。ただ、当初の計画より耐震補強工事を急ピッチに進めて今年8月には全床再開する予定です。慢性期医療を担ってきた釜石のぞみ病院(一般病床52床、療養病床102床)も被災して入院機能などが一時ストップしましたが、徐々に回復してきています。急性期から慢性期、在宅までの流れが元に戻りつつあります。

 在宅医療における「家」とは、そこで生活してきた人たちの「歴史の集積体」です。そのため、みんな「家」に引き付けられ、最後までそこで過ごしたいと思うのです。今回の震災で人々が失った家は建物だけではありません。自身の「歴史の集積体」としての「家」も失ったわけです。こうした状況では、震災で避難所や病院に入らなければならなくなった患者の「在宅復帰したい」という意思が保たれるのかといった心配があります。

 ですが私は、釜石の在宅医療は以前の状態に必ず戻ると信じています。被災した在宅療養者が、新たな生活の場において家族全員で新しい歴史を構築し、震災の体験を自分史の1ページと捉えられるようにするために何をすべきか―。医療者として考えていきます。