えくらんどみなもとわかこ氏○1987年に高校卒業後、渡米。91年米ボブジョーンズ大卒、2002年米バンダービルド大看護学部大学院新生児NP専門課程修了。現在Pediatrix Medical Group of Tennesseeで新生児のNPとして勤務する。

 私は米テネシー州中部の7つの病院の高度NICUや一般新生児を担当する新生児医療チームに所属するNPナースプラクティショナー)として、産科ともチームを組んで新生児医療に従事しています。外国生活が長い私に取って、日本は距離的には遠い場所ですが、災害が起こるといても立ってもいられなくなります。今回も、被災された皆さんや被災しながらも継続して地域の医療に当たっておられる多くの医師や看護師、他の医療者の方たちのことを思い、心苦しく思っていました。

 日本の医療関係者とメールでやり取りをする中で、現場に医療ニーズがあることは分かりました。ですが、私は米国では修士号を受け、新生児に対して診断・治療を行う資格や免許を持っているものの、日本では高校しか卒業していませんし、何の資格もありません。貢献する場所がないと半ばあきらめていた時に、徳洲会の災害医療チーム(TMAT)が海外からもメンバーを募っていると知りました。自分が新生児NPであること、NPになる前に米国で移植外科、心臓外科などで成人の看護経験があることなどを説明するメールを送ったところ、3月29日に米国を発つチームに参加できることになりました。TMATの被災地本部のある仙台徳洲会病院に到着すると、宮城県南三陸町に派遣されるチームで活動することが分かりました。

海外の医療者を受け入れることは災害時でなければ無理でした。外部の人間で日本の資格も無いのに受け入れ、信頼して医療活動の機会を与えてくださった厚生労働省と徳洲会のTMATの皆さんには心から感謝しています。また、現地では、徳洲会のみではなく様々なボランティア医療団体の方々と働くことができました。仲間意識をもって活動をさせてくださった方たちにも感謝しています。

 個人的な自己紹介の際にはNPだと名乗りましたが、日本においてはNPは看護師です。今回、一緒に働くチームのリーダーが現地で作った役割の割り振りからも看護師として活動が主に期待されていることは明らかでした。

 海外に対する徳洲会からの募集でも、帰国するチームごとに医師2人看護師2人によってメンバーを構成するのが条件となっていましたし、私が参加したチームには十分な数の医師がいましたから、必要に応じて看護師として働くことに違和感は抱きませんでした。徳洲会のリーダーの方々にとっては米国からのNPや一般的に看護経験がないPA(フィジシャンアシスタント)の資格で参加する人材を参加させるのはかなりの冒険だったことも確かだと思います。正式にはNPが何なのかといった論議は特にチームの公の場では出ませんでした。

 そもそも今回の参加は職種よりも、1人の人間として貢献する場所があればという思いでボランティアを申し出たのですから、配膳など、医療と関係ない仕事に回ることもあり得ると思っていました。一度は海外の医療者に向けて働く許可が出たとはいえ、日本の資格なしでは何もできない状況を強いられる可能性もあると思っていたからです。

 現在日本ではNPを導入すべきかどうか揺れているのは知っていましたし、米国で診療行為を行っていても、日本では「医師に準じる資格です」とは言えません。また、正式にはNPは医師と全く別の資格です。そもそも私のNPの資格範囲はNICUという特殊な現場を取り巻く新生児集中治療で、対象は一般新生児から2歳児までですから、発災後の急性期医療から慢性期医療が求められる場所では、NPとしての経験が現場のニーズに合っているとも思いませんでした。

 ただし、成人急性期看護師時代に行っていた高齢者のルート確保や採血などは手が覚えているとの自負はあり、さらに、様々な外科処置が好きだったこと、現在も老人ホームでボランティアを続けていることなども「看護師として働ける」と考えた背景にあったのかもしれません。ある病院ではルート確保チームとして病院全体の点滴管理をする仕事をしていたこともあります。NPが医師の立場を脅かす存在ではないことを出会う方々に感じていただける機会があるかもしれないと思ったのは事実ですが…。

 ちなみに、米国ではNPは決して看護師としては働きません。私の現場では医師と並んでNPは診療報酬を得る立場であり、私が管理をしても医師が管理をしても同額の診療報酬が得られます。

日本人医療者との初めての現場体験
 私は日本生まれで、日本の医療現場で医師と看護師がやり取りする様子は、家族が入院した際などにも見ており、知識や役割が米国と随分違うことは分かっていました。けれど、それはあくまで外部者としての視点です。自分が医療者の一人として中に身を置くのは今回が初めてでした。被災地という特殊な医療現場での体験を、日本の医療事情として普遍的にとらえるには無理がありますが、それでも、医師と看護師とのやり取りや外来の問診時における看護師の役割、医師への受け渡し方、また、多くの看護師の方々との討論などから、日本と米国の違いを感じることが多々ありました。