福島原発の避難区域からの患者に備え、福島県立医大病院には自衛隊の除染車が待機する。

 福島県が抱えこんだ最大の問題は、福島第一原発の事故だ。原発からは依然として放射性物質の流出が続いている。原子爆弾による瞬間的な大量被曝と異なり、低レベルの放射線の持続的な曝露がどの程度の健康被害を起こすのかを示すデータは少ない。福島医大は期せずして、こうした研究の拠点となることを余儀なくされる格好だ。阿部氏は「そういった研究については福島医大のほか、他大学や国の研究機関の協力を得て、オール福島、オールジャパンの体制で臨むべきだ」と述べた。

新研修医は総勢54人が全員集合、試練は医師のリトマス試験紙
 教育機関でもある福島県立医科大学。新入生や新研修医の動向も気になるところだ。

 新入生については、これまでのところ14人が入学を辞退。うち3人が「原発事故に伴う放射線被曝の影響」を理由に挙げた。研修医については、「他大学出身の19人の医師を含めて総勢54人。1人も欠けることなく、全員が集合した」(企画財務課主任主査の中原智弘氏)。

 「県民の健康は自分たちが守るという志を持った学生が来年以降も集まってくれることを期待する」と阿部氏。横山氏は「今回の試練は一種のリトマス試験紙」とも語る。将来どのような医師になるのか。大震災と原発禍は、医師の志の高さを測る機会になったとの見解を示す。

 「低線量被曝の健康被害の全貌はなお明らかではない」と阿部氏は指摘する。そのような状況下だからこそ、新入生と研修医らは自らの志に対峙することを迫られたといえそうだ。

 学長の菊地臣一氏は3月22日付で、新入生、在学生、初期研修医、専攻医(後期研修医)と、それぞれの保護者に向けた手紙を郵送している。その手紙は、病院機能が復旧したこと、放射性物質による健康被害が生じる可能性がないことを強調しつつ、次のように語りかけている。

 「本学に課せられた使命はこのような未曽有の災害、とりわけ原発災害を医学・医療の面から科学的に検証し、世界に向けて情報を発信し、次世代を守り、日本の将来の創造に貢献することと考えています。本学教職員の士気は高く、学生の皆さんには最善の教育を、研修医・専攻医の皆さんには最善の研修を保証すると共に、危機災害を乗り越えた先にはすばらしい将来が皆さんの前途にあることを心から信じています」