巡回診療の様子。寝たきりの在宅の方から褥瘡の相談を受けて

精神科診療のシステム構築が急務に
 精神心理面について、私の観察した事象に限ってではありますが、報告させていただきたいと思います。テレビでは心のケアの重要性が連呼されていますが、被災地で被災者の方々のニーズに合った精神科診療を実施できる状況には、まだまだなっていないというのが私の印象です。

 宮城県の医療支援団体の全体会議に参加させていただいた時、現地で活動されている精神科医の方は総勢5人でした。この会議でそのお1人が「継続性を重視した医療提供を」と提案されたことから、その翌日に全員が宮城を離れる予定だったらしいのですが、精神科診療のシステムを構築するために全員が滞在を延長することになりました。

 このように、日々被災者の方へのサポート体制が整えられていくことを頼もしく思います。その一方で、児童心理面や、震災前から精神科疾患を持つ方へのサポートの充実を願っています。

 今回の活動中、震災前には精神心理面で医療機関にかかったことはなかったけれども、ストレス耐性が低いという方々が、いろいろな症状に見舞われ始めているという印象を受けました。

 私が活動に当たった地区では、第1回の活動時点から、食料や毛布などは比較的安定供給されていました。TMATの拠点も、薬剤や医療機器(AED、12誘導心電図など)が充実しており、早い段階から質の高い医療を提供できたと思います。

 このような比較的安定した環境になって初めて、被災によるストレス反応に気付くようになったと思われるのですが、不眠やイライラについての相談や、パニックアタック(不安発作)のような症状で搬送される方が増えてきました。このような方々もスクリーニングできればと思う半面、外部からの医療支援者である私たちに、果たしてどれほど精神面の問題を相談してくれるのか、という疑問もありました。

 精神心理の問題はもともとセンシティブなものであることに加え、東北地方の文化を共有できない外部からの支援者が、避難者の方々にどう受け止められているのかが気になります。短い滞在の間に、馴染みのないこの地方の言葉に接し、何度も聞き返さねばならなかった私は、患者さんに対して非常に申し訳なく思うのです。

 今回私が身体面と心理面のどちらを重点的にケアしたかと問われれば、身体面と答えざるを得ません。しかも英語だけを話す医師との共同作業ですから、通常の診察より時間もかかったことでしょう。言葉の問題がなかったとしても、不眠を理由に受診に来られた方が、どれだけ私に心を開いて相談してくださっていたのかは、推し量るしか術がありません。