巡回診療先にて。ハワイから来日したDr.G.Kuniyoshiと

変動する被災者の疾患プロファイル
 診療の内容は、前回と多少違いました。前回は被災中に水に浸かったことによる感冒症状や肺炎、軽度の外傷、それと定期処方薬の喪失で来られる方が主でした。今回多かったのは、被災時点よりも後になって出現した感冒症状や喘息発作、アレルギー症状などです。このほか、倒壊した家屋を整理したり、行方不明の家族を捜索したりしているときに軽い怪我をした方などが目立ちました。

 震災以降の東北地区では、雪やあられが降るなど寒さの厳しい日が続きました。校舎や体育館などでは安定した温湿度管理が難しいため、大勢の方が感冒で診察に来られました。それでも階上中学校では、今回の活動中にインフルエンザの陽性反応が認められた方は、幸い1人だけでした。第1回の活動のころから、インフルエンザ予防策として、トイレ後の水による手洗いとマスク着用を励行していたのが、功を奏したのかもしれません。

 喘息やアレルギー、軽度外傷については、避難生活の長期化に伴うものではないかという印象を持ちました。避難所では防寒対策として、床に何枚も毛布を敷き、避難者の方々はその上で食事や就寝といった日常生活をされています。また、家屋の整理や家族の捜索のため長時間屋外で作業した服で、そのまま避難所に戻ることになります。こうしたことが、喘息やアレルギー症状につながるのでは、と考えています。

 支援物資で避難所にストーブが入り、暖が取れるようになったのは良かったのですが、空気の乾燥は避けようもありません。かなりの方が上気道症状を訴えておられたことと無関係ではないと思います。

 軽度外傷は、釘やガラス片などが長靴や軍手を貫通して四肢に刺さる症例を多く見かけました。巡回診療の際は、破傷風トキソイドが必携でした。ただし、27日の時点で階上地区では電気が復旧し、さらに私が現地を離れた翌日29日の夜には水道も復旧したそうですから、今後さらに状況は変わっていくと思います。

 被災者の方の疾患プロファイルは、ライフラインや支援物資の供給状況、道路の復興状況によって変動する―。今回初めてこのことを学びました。

 また、階上中学校では、第1回の活動時点では土足だった避難所が、中高生スタッフによる献身的な掃除のおかげで、全館土足禁止になっていました。これがアメリカのような土足の文化圏であれば、もっと早い段階から喘息やアレルギーが頻発したり、インフルエンザのアウトブレイクがあったかもしれません。公衆衛生面での危険因子が、日本特有の文化のおかげである程度抑えられたのかな、と思ったことを、追記しておきたいと思います。