東日本大震災による津波で甚大な被害を受けたものの、全国から集まった医師たちの支援で、避難所、避難所に来られない被災者の健康状態をフォローする体制が出来上がっている。その甲斐あって、中核となる気仙沼市立病院における診療は落ち着きを取り戻しつつある。ただし、連日頑張ってきたスタッフ自身の住居の確保など、問題は山積している。

 気仙沼市立病院呼吸器科の椎原淳氏が、地震発生後からNMO編集部に報告し続けていただいている日々の状況について、3月25日から29日までにいただいた分を掲載する。


3月25日22:14
医療スタッフも被災者、住居の問題は全く手つかず

 今日で震災から2週間が経過しました。不思議なことに、ここ1〜2日の内科救急患者は減少傾向にあります。各避難所に散って対応してくれている災害対策チームが、避難所で立ち上げた診療所において適切な治療を行ってくれていること、体力が低下している方たちのほとんどは既に入院してしまったことなどが理由として考えられるかと思われます。

 ところで、少しのんきな話に聞こえるかもしれませんが、年度末を迎えるに当たってスタッフの間で話題になっているのは、今後の住居の話です。病院近くの鉄筋のアパートは津波後もそれなりに残っていますが、1階はほぼ浸水しているため入居不能。空いていた部屋も震災後早々に押さえられてしまったと聞きます。

 また、4月だったはずの異動が5月にずれ込み、住居の契約の問題で家を出なくてはならない医師もいます(私もその1人です)。

 看護師も含めて、家を失ったスタッフはかなりの数に上ります。みな、病院の中に仮眠の場所を各々見つけて眠っています。眠りを取れるのは、器材庫だったり、リネン室だったり、空いている病室だったりです。ちなみに、応援の医師・看護師の一部は何と透析室で眠っています。

 避難所暮らしをしている方々には、住居についての私たちの心配は何ともわがままな話に聞こえるかもしれません。しかし、不規則な勤務が続く病院スタッフがしっかり眠る場所が確保できないことは、医療の供給体制を揺るがす大きな問題となりつつあります。


3月27日22:51
震災前と後、入院時の聴取内容の変化

 昨日は救急対応を大学からの応援の先生にお願いしていましたが、本日は私と応援の先生の2人で、救急受診する内科患者を診察していました。

 日中の総来院患者数は60人弱。8対2くらいでやはり内科疾患が多くなっています。重症度の高い肺炎や心不全が驚くほど多いという印象です。ただ、逆に考えると、各避難所に立ち上げた診療所で診療とトリアージが的確に行われ、重症例が市立病院に適切に搬送されてきていることが分かります。

 震災後は、入院時に意識して患者背景を聴取するようになりました。「避難所暮らしか自宅暮らしか」「電気・水道は復旧しているか」「迎えに来てくれる家族や親戚はいるか」といった点です。震災前には聴取することもなかったこれらの情報ですが、今は、退院を考えるときに非常に重要になる情報だからです。残念なことに、患者さんの半数近くは家を津波に流されてしまって避難所暮らしという状況で、自宅で通常通りの生活をできている方はごくわずかです。

 避難所、電気・水道・ガスの通っていない自宅での生活環境は極めて苛酷です。そのため、急性期治療が終わった後は内陸の病院に短期的な転院をお願いしたり、遠くの親類の家に退院してもらったりと、患者さんに大きな負担を強いているのが現状です。仮設住宅など安心して療養できる環境が整わないと、被災地の方々の健康はいつまで経っても抜本的には改善されません。


3月29日23:31
震災前のような日常外来ができることの小さな喜び

 数日前から、当院の呼吸器科・循環器科は一般診療を再開しています。顔なじみの患者さんが予定通りに通院してくると、「無事だったのですね!」と、お互いの無事を喜び合うことから診察が始まります。救急対応に追われる毎日の中で、震災前のような外来を始められていることに、小さな喜びを覚えます。

 気管支鏡やCT、MRIなどの検査も、今週は予定することができ、少しずつ診療レベルは改善してきました。とはいえ、ガソリン不足のために患者さんの通院は容易ではなく、行える検査・治療もまだまだ限られています。十分な医療を行えているとは到底言えません。

 震災前ならば当然の医療を提供できないことに歯がゆさを感じながら、抗癌剤を投与する患者さん、重症の患者さんを急いで他院に紹介しているという状況です。

 被災地の真っ只中の病院にまず求められているのは、肺炎を中心とする感染症の治療であり、しばらくはこの使命に集中したいと思っています。

【編集部からのお願い 被災地の状況をお知らせください】
 日経メディカル オンライン(NMO)では、東北地方太平洋沖地震の被災地で奮闘している医療従事者の方々からの情報発信、および被災地で役立つ医療・保健情報の収集に努めています。これらを、被災地の医療現場に還元することで、及ばずながらも被災者を支援していきたいと考えています。

 被災地で尽力されている医療関係者で、現地の状況についてお伝えいただける方、また、被災地での医療対応に役立つ情報ソースをご存知の方は、ぜひ下記まで情報をお寄せください。その際には、もし可能であれば、勤務先の医療機関名や専門科目、掲載の可否(内容やご氏名など)についてもご記載いただけますと幸いです。

 大変な時ですので、ご無理のない範囲でご協力ください。どうぞよろしくお願いいたします。

◆情報はこちらにお寄せください(メール)
◇もしくは、こちらからお願いします(お問い合わせフォーム)

◆この記事への応援コメントは、右下の「コメントする」をクリックしてご入力ください