写真2 停電で夜間照明が消えたヘリポートに、自動車のヘッドライトが照らされる。

さぁ、次はドクターヘリによる患者の域外搬送だ。

まずは1人目。
11時57分、最初の県内搬送患者を乗せたドクターヘリが離陸した。
70歳代男性、地震後の火事で火傷して昨夜入院。
手術が必要な3度熱傷が25%ある。
12時30分、弘前大学ヘリポートに着陸して弘前大学への転院が完了した。

13時00分、離陸。
13時24分、八戸市立市民病院に着陸。

続いて2人目。
13時46分、離陸。敗血症で腎瘻(腎臓から尿を外へ出す管)を留置した男性。
持続透析治療、人工呼吸器接続、気管切開状態。
14時18分、弘前大学着陸。
屋上へリポートから2階の救命救急センターまで送り届けた。
14時45分、離陸。
15時08分、八戸市立市民病院に着陸。

そして3人目。
昨夜入院した女性で、出血性ショックと頭部外傷。
循環は安定したが、頭部外傷の治療が必要。搬送先は青森県立中央病院。
受け入れてもらうのに少し苦労したが、大病院には良くあること。気にしない。

さらに4人目。
14時にERを受診したばかりの在宅酸素療法を受けている男性。
停電で酸素が作れず、自宅での生活は無理。入院するしかない。
発災と同時に、何人もの在宅酸素療法患者が八戸ERを受診した。
ほぼ全員が入院。
周辺医療機関は停電のため、休診か診療規模を縮小している。

この男性も同じ。院内に備蓄した酸素も、もうすぐ底をつくはずだ。
「今から青森市の病院へ入院することをお勧めします。こちらで手配できます」
男性は、了承してくれた。

いったんは離陸したドクターヘリを、再び着陸させた。
3人目の女性はストレッチャー、4人目の男性はいすに座らせた。
15時30分、八戸離陸。
15時56分、青森県病ヘリポート着陸。
明石医師は、男性患者に付き添って青森市の近藤病院へ向かった。
16時43分、県病ヘリポート離陸。
17時05分、八戸市立市民病院着陸。

写真3 停電したヘリポートに着陸するドクターヘリ。(YouTubeより転載。もとの動画はこちらから)。

まだまだ5人目。
被災患者が集まったのは八戸ERだけではない。
近くの青森労災病院も同じ。
16時に青森労災病院から、弘前大学へ頸髄損傷患者のヘリ搬送を頼まれた。
もちろんOK。
最終離陸は、日没1時間前。十分間に合うはずだった。
さらに八戸市民病院救命救急センターから、
6人目の患者を弘前大学へ運ぶ計画だった。

ストレッチャー2台を同時に入れて、ドクターヘリ搬送をする。
1台はドクターヘリストレッチャー。
もう1台は床に敷いたバックボードに寝かせる。
しかし床にバックボードを置くためいすを撤去する必要がある。
作業時間は約15分。間に合うはずだった。

17時05分、近藤病院へ送り届けた明石医師がドクターヘリで八戸へ戻ってきた。
タイムリミットぎりぎり。
「いすを外す作業は無理だ。このままで、労災病院の患者だけ弘前大学に送る」
残り2人の同時搬送は諦めて、5人目だけの単独搬送を決断した。

17時16分、八戸離陸。
17時46分、夜間照明に照らされた弘前大学ヘリポートに着陸。
18時09分、夜間照明の助けを借りてドクターヘリは薄暗い空に向け離陸した。

その20分後、サーチライトを照らしたドクターヘリが西の空に現れた。
八戸市立市民病院のへリポートは、停電のため夜間照明がつかない。
そのため、車のヘッドライトで代用する。

※編集部注:撮影された動画は、YouTubeにて公開中です。
こちらからご覧いただけます。

そして迎えた震災2日目の夜。
八戸ERとドクターカーは、前夜ほどではないが多くの市民を救う。
ER当直の最上医師がみんなに聞いた。
「今夜の応援に入る順番を決めましょう。ERが大盛り上がりする前にSOSします」
一気に5人の手が挙がった。いい仲間に囲まれて幸せだ。

そら、歩いてきた患者がERに押し寄せている。
災害はまだまだ始まったばかり。

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