「アドレナリン入れて2分たちました。チェックパルスです」。隊長が言う。
「頸動脈なし、波形VF」
「車両停止!」隊長が機関員に告げた。
同時に、AEDのメッセージが出た。
「ショックが必要です。オレンジ色のボタンを押して下さい」
救急車は停止する。
波形は目で見てVF(心室細動)。
ショックボタンを隊長が押す。
体全体が5cmくらい持ち上がった。
すぐにCPR開始。

私は、あることを考えて、次に、ソケイ部動脈を狙った穿刺を行ってみる。
ソケイ部は静脈の外側に動脈がある。
反対に、頸部では動脈の外側に静脈がある。
揺れる車内で、動脈を狙う。
しかし、うまくいかない。
こういうときは、蘇生も全部ダメな気がしてくる。
「アドレナリン入れてから3分です」隊長が言う。
「低体温症による、VF。薬剤投与はしない。ショックのこれで終わる。CRPのみで八戸ERへ入れるよ」私。

丸橋医師と目が合った。
携帯で、ダイレクトブルーを鳴らした。
しかし、持っているauの携帯はつながらない。
隊長のdocomoを借りた。
つながった。
実は、このあと3日間auはつながらなかった。
「ドクターカー今です。ERの混み具合はどう?」私。
「いま、空いています」隆文医師。
「それじゃ、CPAに集中治療を開始するから。いいね」私。
「はい」隆文医師。
「PCPS(経皮的心肺補助装置)用意、復温する。接触時JCS10、車内CPA、現在VF」私。
「あと何分ですか?」隆文医師。
「45号線、横町ストアを右折した。あと5分」私。
「はい」隆文医師。

私は、再びソケイ部の動脈穿刺を試みる。
PCPSに必要なラインだ。
うまく行った。
救急車のサイレンが止むのより数秒早く。
サイレンを止めた、救急車は病院敷地内に入った。
内針の処理をする。
テープ固定はしない。もう時間がない。
指で動脈ラインを抜けないように固定する。
後ろのハッチが開くと、5名の救急医が近寄った。
「偶発性低体温症、最初はショック。PCPSの準備は?」私。
「まもなくできます」隆文医師。