被災地での診療で必要だと感じたのは、聴診器、血圧計、ペンライト、簡易血糖測定器などです。短時間で多くの患者を診る必要があり、一人ひとりにかける時間は短くなるため、血圧は必要な人だけ測りました。血糖値は測れませんでしたが、必要だと感じることがありました。災害医療の現場では、なければないで診療に当たります。でもこれらのものがあれば、限られた時間の中でより質の高い医療が提供できると思います。

 「今日の治療薬」のような薬の本も持っておいた方がいいでしょう。専門外の薬の商品名をとっさに出されても分からないこともあるので、常に本を手元に置いておきました。

水、ガソリンがなければ医療も提供できない
 医薬品が足りないのももちろんですが、より深刻なのは、水、ガソリンの不足です。確保できなければ、あと1、2日で活動が止まってしまう可能性が高いのではないかと感じました。

 水がなければ、消毒が十分にできません。また、いわき市は香川県と同じくらいの広さがあり、避難所同士も離れているため、車でなければとても移動できません。給油所はありますが、ガソリンの在庫はすぐにつきてしまったようです。

 私が入ったのは被災から2、3日後ということで、今すぐに感染症の流行が問題になるということはなさそうでした。しかし、水が不足しているため、トイレなどの衛生面では既に不安が生じてます。例えば高齢者の方は、避難所内でおむつを替えざるを得ません。今後、ノロウイルスやインフルエンザなどの流行の危険性が出てくるかもしれません。

 また、私がいわき市入りした時点では、被災者の方々もまだ気持ちが張っていたように思います。1週間、1カ月後には、精神状況も変わってくると思います。メンタルヘルスケアなど、今とはまた別のケアが必要になるでしょう。

また現地入りしたい
 いわき市は、福島第一原子力発電所から30〜40kmの距離にあります。私は、ヨード剤を服用して診療に当たりました。

 被曝リスクについては、行政がチェックしてくれており、市が公表した3月16日のいわき市合同庁舎の空間線量率は、最大18.78μSv/時間、最低0.98μSv/時間でした。この程度の数値であれば、滞在しても問題ないと思います。状況は刻一刻と変わっていますが、もし大きく悪化しない限り、準備が整い次第また現地入りするつもりです。

 もし災害医療への参加を希望されるのであれば、日本医師会に連絡してもらえれば、地域医師会がコーディネートしてくれます。被災で通行できない道路などがあるため、被災地での診療には、地元の方の協力が欠かせません。今回、私が避難所を移動する際にも、地元の方に運転していただきました。また、地域によっては、高齢者の言葉(方言)を聞き取れないこともあります。こうした場合も、地元の方に間に入ってもらいました。

 大規模災害後は、継続的な支援が必要になります。災害医療は外傷医療と捉えられがちですが、継続的に求められる災害医療は、被災地にいる人たちの健康を維持するためのプライマリケアです。

 プライマリケア医の方々には、どうか、この東日本巨大地震からの復興にかかわってほしい。被災地でこれから強く求められるのは、プライマリケア医の活躍です。

【編集部からのお願い 被災地の状況をお知らせください】
 日経メディカル オンライン(NMO)では、東北地方太平洋沖地震の被災地で奮闘している医療従事者の方々からの情報発信、および被災地で役立つ医療・保健情報の収集に努めています。これらを、被災地の医療現場に還元することで、及ばずながらも被災者を支援していきたいと考えています。

 被災地で尽力されている医療関係者で、現地の状況についてお伝えいただける方、また、被災地での医療対応に役立つ情報ソースをご存知の方は、ぜひ下記まで情報をお寄せください。その際には、もし可能であれば、勤務先の医療機関名や専門科目、掲載の可否(内容やご氏名など)についてもご記載いただけますと幸いです。

 大変な時ですので、ご無理のない範囲でご協力ください。どうぞよろしくお願いいたします。

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