レジメンによって催吐性を評価
 ここで確認しておくと、抗癌剤の催吐性は4段階に分類され、「高度」は悪心・嘔吐が患者のほぼ全員に、「中等度」は30〜90%、「低度」は10〜30%、「最小」は10%未満に発生するリスクをいう。

 また悪心・嘔吐の出現形態には、抗癌剤投与後24時間以内に出現する「急性」、24時間以降に出現し数日間持続する「遅発性」、制吐薬の予防的投与にもかかわらず発現する「突出性」、そして前回の抗癌剤投与時のコントロールが不十分だった場合に次の化学療法試行前から出現する心理的な「予期性」がある(表2)。

表2 癌薬物療法の経過時期による悪心・嘔吐の評価のポイント

 この予期性の悪心・嘔吐の患者は、かつては20%も存在するといわれていたが、制吐療法の進歩により現在は、予期性嘔吐は2%未満、予期性悪心は10%未満とされる。

 抗癌剤による急性および遅発性の悪心・嘔吐は、抗癌剤が神経伝達物質であるセロトニン(5-HT)やサブスタンスPを介して脳の嘔吐中枢を刺激することで起こる。急性の悪心・嘔吐には主に5-HTが、遅発性悪心嘔吐には5-HTとサブスタンスPが主に関与しているとされる。

 1980年代には消化管運動改善薬メトクロプラミド(商品名プリンペランなど)やステロイドが使用されたが、90年代に入るとオンダンセトロン(商品名ゾフラン)やグラニセトロン(商品名カイトリルなど)といった第一世代5-HT3受容体拮抗薬が登場し、急性の悪心・嘔吐を予防できるようになった。そして遅発性の悪心・嘔吐にも有効な、サブスタンスPとNK1受容体の結合を阻害するアプレピタント(商品名イメンド)が2009年に、第二世代の5-HT3拮抗薬パロノセトロン(商品名アロキシ)が2010年に日本でも承認され、準備は整った。

 制吐薬適性使用ガイドラインの初版が出版されたのは、ちょうどこの頃である。

 それまで日本で準用されていた欧米のガイドラインが抗癌剤単剤の催吐性を示していたのに対し、このガイドラインでは用いられる標準レジメンごとの催吐性リスクを掲載するという、日常診療を強く意識したものだった。言うまでもなく癌の化学療法は多剤併用が主流であり、併用により催吐性リスクが増強されるものも多い。
 
 そしてこの「リスク分類からみた臓器がん別のレジメン一覧」は、改訂版にも引き継がれた。

多職種が連携して対処
 その他、最近の癌薬物療法における状況の変化を踏まえ、改訂版では経口薬や外来化学療法に関する新たなクリニカルクエスチョンが新設されている。

 「経口薬は連日投与が多いので、日々の悪心・嘔吐のコントロールが重要になる。そうすると制吐薬の副作用にも気を付ける必要があるので、補足的に副作用の項目を加えた」と佐伯氏。

 さらに、「外来化学療法も含めて、自宅でのチェックが重要になる。医師はそこまで頭が回らないので、薬剤師と看護師にもガイドラインの作成メンバーに入ってもらった。3つの職種が力を合わせて、真のユーザーである患者さんのためにガイドラインを役立ててもらいたい」と佐伯氏は話している。