嘔吐と比較して悪心は食欲不振や胃部不快など類似症状との区別が難しく、また環境的な要因の影響を受けやすいため、評価が難しい。

 薬剤の臨床試験などで悪心・嘔吐の客観的な評価法は、米国立癌研究所(NCI)が作成した有害事象の評価基準、CTCAE(Common Terminology Criteria for Adverse Events)が一般的に用いられている(表1)。しかし、「新薬の副作用に関してはフェーズ3のデータくらいしかないことが多いが、臨床試験では薬剤の効果が優先され、副作用に関してはコントロールできれば認めましょうという考え方なので、CTCAEでは悪心と嘔吐を分けない大まかなとらえ方しかできない。悪心の程度がどれくらいなのかは分からない」と佐伯氏。

表1 癌治療に伴う悪心・嘔吐の客観的な評価

 また、患者の主観的評価に関しても、「VAS(Visual Analogue Scale)では何となく分かるが、あくまで『何となく』だ」と佐伯氏は苦笑する。

 「現時点では推奨療法に限界があるということを踏まえた上で、一人ひとりの患者さんに最適なものを考えていく必要がある。ガイドラインには適正使用という名前が付いているが、これはここをミニマムに考えましょうということ」と佐伯氏は話す。と同時に、「皆が納得できる客観的なデータを積み上げて行かなければならない」と今後の課題も挙げる。

 実際、日本では、がん治療とCINV(癌化学療法による悪心・嘔吐)研究会による前向き研究など、データの蓄積が進められている。

遅発性悪心への対処が課題、CINVの実態調査より【肺癌学会2013】

胃癌初回化学療法で遅発性悪心は5割以上に発生、多施設共同前向き観察研究【癌治療学会2014】