宮城県地域医療計画策定懇話会の座長を務めた東北大学大学院医学系研究科教授の濃沼信夫氏

 医療資源が限られる中、「一定水準以上の医療を広く行き渡らせるという観点からは、医療圏の広域化が望ましい。その上で、各医療機関の機能分化と連携を通じ、不足する医療機能やリソースを相互に補完すべき」。こう語るのは、県の地域医療計画策定懇話会の座長を務めた東北大学大学院医学系研究科教授の濃沼信夫氏だ。県懇話会の結論は、同氏のそうした考えを色濃く反映した内容になっている。

機能棲み分けで圏域内の質向上
 「医療圏の広域化の目的は今以上のサービスを提供することにあり、それが再編の大前提」。県保健福祉部長の岡部氏は、「医療過疎に拍車をかけるような再編・統合には反対」という声に対し、誤解を解くかのごとく、こう語る。

 実際、県では、限られた人的資源で地域医療を支えるために、様々な仕掛けづくりに着手済みだ。医療環境の充実強化に向け、2012年2月には国の復興予算や地域医療再生基金などを活用した、「第2期宮城県地域医療再生計画」(2011年度〜2013年度)および「宮城県地域医療復興計画」(2012年度〜2015年度)を策定。その中で、未来を見据えた複数の方策を打ち出している。

 両計画にかかわる具体的な施策は図2の通り。744億円もの事業費が計上された地域医療復興計画ではまず自治体病院の統合・再編による医療資源の再配置として、老朽化が激しい気仙沼市立病院の移転を予定するほか、津波被害で全壊した南三陸町の公立志津川病院、さらには同じく津波被害で壊滅状態に陥った石巻市立病院を高台に新築する。地域で必要な医療機能は残す前提で計画が練られており、例えば、気仙沼市立病院ではこれまでなかった緩和ケアや回復期リハビリ、石巻市立病院では亜急性期や在宅療養のバックアップ機能の充実を図る。

図2◎宮城県における地域医療復興に向けた具体的な施策(各事業別の金額は、地域医療再生基金充当予定額)
出典:「第二期宮城県地域医療再生計画および宮城県地域医療復興計画」(県保健福祉部)
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 その一方で、合併後の医療圏の中核となる石巻赤十字病院のさらなる機能強化も進める。高度急性期機能は石巻赤十字病院、一般救急や亜急性期、回復期、緩和ケアなどは気仙沼市立病院や石巻市立病院といった具合に、圏域内で機能の棲み分けを明確化するのが基本的な考え方だ。

 加えて、ICT(情報通信技術)を活用した地域医療連携システムを全県挙げて構築する。これは、県内の医療・介護関係事業者をネットワークでつなぎ、患者や利用者の病歴や検査・介護データなどの情報共有を通じて相互の連携を促進するもの。ICTネットワークシステムの導入は、在宅医療の推進、へき地医療活動の支援、地域包括ケア体制の構築に役立つと期待されている。

 全県規模のシステムとするのは、東日本大震災によって県内の多くの医療機関が壊滅的な被害を受け、特に沿岸部の津波による診療情報の喪失で、患者への早期かつ適切な医療の提供が困難になったことを教訓にしている。東北大学の協力も仰いで、災害に強いネットワークシステムを構築する。