宮城県保健福祉部長の岡部敦氏

 実際、県保健福祉部長の岡部敦氏は「何も手をつけない方が楽だった。だが、そう悠長なことを言っていられないため、しっかりと議論できる場を設けて結論を出してもらった」と打ち明ける。

 県が昨年1月に調べた2次医療圏ごとの入院患者の流出入率はの表1の通り。国の基準に照らすと、仙南、登米、石巻、気仙沼の4圏域が見直しの対象となった。中でも、登米は流出率が44.8%と半数近くに及んでいた。

 県は、昨年夏の段階で、医療圏見直しの必要性の有無や再編のあり方などについて、専門家らで構成する地域医療計画策定懇話会で検討してもらうことにした。そこで出された結論が、今回の見直し案だった。

表1◎宮城県患者調査の主な傾向と2次医療圏内体制整備の見通し
出典:第6次宮城県地域医療計画(最終案)
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医療圏統合の主眼は医師確保
 その審議過程を詳しく見ていくと、最大の論点だったのが、震災により深刻さを一層増した医師不足。表2に示す通り、宮城県の人口10万人当たりの届け出医師数および病院勤務医数は、いずれも全国平均を下回る。さらに、県全体の医師数が少ない上に、その大半は仙台に一極集中している。

表2◎宮城県の医師数の状況
出典: 届け出医師数は「平成22年医師・歯科医師・薬剤師調査」(厚生労働省、2010年12月末現在)、病院勤務医数は「平成23年病院報告」(厚生労働省、2011年10月1日現在)
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 2次医療圏の中でまず議論の対象になったのが、患者流出率が50%近い登米医療圏。同医療圏は登米市のみの単独医療圏として存続してきたが、人口10万人当たりの医師数は県内ワースト。今後も市単独での医師確保は難しいため、再編が不可欠と判断された。石巻医療圏に組み入れられたのは、2009年に整備された三陸自動車道を利用すれば、登米市中心部から石巻赤十字病院までの所要時間は車で30分程度で、同じく合併先候補となった大崎医療圏の大崎市民病院よりも約10分近いからだ。

 登米の合併先が決定すると、津波で甚大な被害を受けた南三陸町の仮設住宅の多くが登米市内にあり、住宅内の患者が石巻医療圏にも多数流れていることから、南三陸町も石巻医療圏への合併が妥当との判断となった。これに伴い、南三陸町と同一医療圏を形成する気仙沼市も石巻医療圏への組み入れが決まった。気仙沼医療圏は、人口当たりの医師の充足率が登米医療圏に次いで県内で2番目に低く、医師確保に非常に苦しんでいる点が考慮された。

 また、医師不足とあいまって、これまでの7医療圏には、圏域ごとの医療機能に大きな濃淡があるという問題もあった。例えば、気仙沼医療圏は慢性的に小児科医が少なく、南三陸町では震災以前より産科医が不在だったため、対応困難な医療は以前から、石巻医療圏や仙台医療圏に依存していた。さらに、気仙沼医療圏には、がん診療連携拠点病院はなく、在宅看取り率は県内最下位の7.54%(2010年度)にとどまる。緩和ケア病床も皆無だ。