2月14日に開かれた県医療審議会。2次医療圏の再編に難色を示す自治体の首長が反対意見を述べたが、最終案通り4医療圏とすることで決着した

対象外にもかかわらず再編断行
 そもそも今回の2次医療圏の再編は、国の医療計画見直し方針に端を発したものだ。各都道府県の医療提供体制の方向性を示す医療計画は通常5年ごとに見直され、2013年度からは新たな計画がスタートする。その柱は、既存の「4疾病」への精神疾患の追加や疾病・事業ごとのPDCA(Plan、Do、Check、Act)サイクルの運用強化、そして2次医療圏の再編─の三つだ。

 2次医療圏は現在、全国に349カ所ある。だが、国は、細かく分かれ過ぎていて非効率な面があるとの判断から、2012年3月に見直す方針を決定した。対象となるのは、人口が20万人未満で、「他圏域への入院患者の流出割合(流出率)が20%以上」かつ「他圏域からの入院患者の流入割合(流入率)が20%未満」の医療圏。該当するのは、32道府県の87医療圏に上る。

 ただし、医療圏見直し基準を示した厚生労働省は、通知発出の際、東日本大震災の影響を考慮して、「岩手、宮城、福島の被災3県は見直しの対象外」とした。にもかかわらず、宮城県は今回、2次医療圏の再編を断行した。

 厚労省によると、2月末時点で、4月以降の2次医療圏の再編を予定しているのは、宮城県のほかは栃木県と徳島県のみ。残る29道府県は、「地元の反発がことのほか強いといった理由で、現状維持の方向」(厚労省医政局指導課)だ。こうした中での宮城の動きは、驚きをもって受け止められている。

気仙沼市立病院の機能維持に不安
 今回の県の決定に、統合の対象となった地元は落胆を隠さない。特に、県最北端に位置する気仙沼医療圏の再編に対する不安は強い。高速交通網が発達していないという地理的条件に加え、震災のダメージも深刻なためだ。

気仙沼市医師会会長の大友仁氏

 気仙沼市と南三陸町などからなる気仙沼医療圏は震災で多くの医療施設が被災し、昨年9月時点での再開率は73.1%と、全7圏域で最も低い。気仙沼市医師会会長の大友仁氏は、「気仙沼の医療機関はいまだ復旧途上にある。その段階でこんな動きをされると、我々のモチベーションも下がる」と、憤りをあらわにする。大友氏が最も懸念するのは、気仙沼市立病院(451床)の機能低下だ。気仙沼が石巻医療圏に合併されて医療機能の集約化が進めば、圏内の基幹病院となる石巻赤十字病院の機能は充実しても、気仙沼市立病院では、「診療科の縮小や医師の引き揚げが起こり得る」(大友氏)との予測からだ。

 現在の気仙沼医療圏には200床以上の病院が3カ所あるが、気仙沼市立病院以外は精神科病院で、市立病院が夜間の2次救急医療全般を担っている。もともと同圏域は医科診療所の不足が顕著で、震災前から市立病院への依存度が高い。「市立病院の医療機能が下がれば、そこを頼りとしている開業医も立ち行かなくなり、ひいては地域の衰退につながる」と、大友氏は悲嘆する。

気仙沼市立病院脳神経外科科長の成田徳雄氏

「手をつけない方が楽だった」
 気仙沼市立病院脳神経外科科長の成田徳雄氏も、今回の再編を否定的に受け止めている。高速交通体系整備のめどが立っていないことに加え、震災を通じ、「身近な医療、地域医療の充実が不可欠であることを痛感した」(成田氏)からだ。自身、震災後に顔の見える連携の重要性を再認識したほか、その後も県の災害医療コーディネーター活動を通して、被災各地で生活不活発病や孤独死などの問題が続く現実を目の当たりにしてきた。「医療圏を広域化すれば、医療水準が全体的に下がる恐れがある。住民の安心のためにも、優先すべきは身近な地域医療の充実」というのが、成田氏の考えだ。

 だが、こうした地元の声は、振り切られる格好となった。再編反対派に共通するのは「医療圏の見直しにより地域医療がより良くなるイメージが全く湧かない」(大友氏)との思いだが、県をはじめ、県医療審議会のメンバーの大多数は逆に、「早急に手を打たなければ、被災地の地域医療はさらに悪化する」と考えている。