■うがい薬や昆布が予防に不適当な理由

 インターネットなどで、安定ヨウ素剤の代わりに、ヨウ素を含むOTC薬や食品を摂取すれば甲状腺癌が予防できるという“俗説”がありますが、いずれもこの目的で使用するには適当ではありません。

 「うがい薬」に含まれるポビドンヨードは、経口摂取(飲み込むこと)は認められていません。そもそも37%程度のアルコールを含んでいますし、添加物が消化管を荒らす可能性もあります。さらに有効量を取るには、14.3mLも服用する必要がありって現実的ではないので、不適切とされています。

 「ヨードチンキ」にも、エタノールが70%以上含まれていて、小児の服用には適しません。しかも、単体のヨウ素(I2)が含まれるため、消化管を荒らすなどいろいろな悪影響が考えられるので、避けるべきとされています。

 「消毒用イソジン」も、ポビドンヨードやマクロゴールを含むことから適さないとされています。

 「ルゴール液」には、フェノールが含まれるので、不適当です。

 「コンブ」にはヨウ素が多く含まれているため、予防に有効なのではないかとする意見もありますが、成人での有効量を摂取するには、産地にもよるようですが、乾燥コンブを50g程度を摂取する必要があり、現実的ではありません。ましてや、本当に必要な小児には適さないでしょう。


■放射性セシウム(137-Cs)の危険性と排泄促進剤

 セシウムは癌治療のガンマ線源として重要なものですが、被曝の程度がひどいと致命的となります。半減期が8日間のヨウ素と比して、セシウムは半減期が30年と非常に長いため、摂取してしまうと人体への影響も大きくなります。

 こちらは、体内への取り込みを防御するための薬剤はありませんが、排泄を促進する薬剤はあります。昨年12月に発売されたばかりの、放射性セシウム体内除去剤であるラディオガルダーゼ(一般名:ヘキサシアノ鉄(II)酸鉄(III)水和物)です。

 高校の化学で習ったことを思い出す方も多いでしょう。青色の色素でもあります。イオン交換および結晶構造内への吸着の原理でセシウムと結合し、腸管からの再吸収を妨げることによってセシウムを体外に排泄します。そうした薬ですので、ラディオガルダーゼを服用した患者の排泄物には、放射性物質(放射性セシウム)が多く含まれることになります。

 製造元の日本メジフィジックスは、本剤をドイツから緊急輸入し、福島に送ることになっています(2011/3/14時点の情報)。

 酸化還元型のイオン交換能を利用し、放牧飼育される家畜(牛など)の飼料に加えると、乳や肉の汚染を抑えることができるので、チェルノブイリ原発事故の後、土壌処理が困難な牧草地で家畜に投与されました。この薬剤は、原発近くの人しか用いることはないでしょう。


■放射性ストロンチウム(89-Sr、90-Sr)の危険性

 ストロンチウムにも健康被害のリスクがあるとされていますが、摂取の防御も排泄促進も難しいようです。90-Srに関する情報はあまり得られませんでした。89-Srは医薬品として存在し、骨転移による疼痛緩和に用いられますが、骨髄抑制の副作用があります。放射性でないものは、骨粗鬆症薬として開発されています。


《参考資料》
『安定ヨウ素剤取扱いマニュアル』財団法人原子力安全研究協会(2003)
医学のあゆみ 2009;234(4):306-310
日衛誌 2008;63:724-734
臨床と研究 1997;74(7)
日本集団災害医学雑誌 2001;6:100-104
ラディオガルダーゼ 添付文書、インタビューフォーム
メタストロン 添付文書、インタビューフォーム

 
【訂正】2011.3.22に以下の訂正をしました。
・ヨウ素の必要量に関する記述のうち、3歳以上〜13歳未満について「ヨウ化カリウムとして50mg(ヨウ素として50mg)」とありましたが、正しくは「ヨウ化カリウムとして50mg(ヨウ素として38mg)」でした。
 

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