津波の被災地では、どのような健康被害が発生するのか。

 2004年のインド洋津波の復旧経験を受けて、作業をどのように安全に進めていくべきかをアメリカ疾病予防管理センター (CDC)がまとめたリポート(健康被害について)(安全な作業の進め方)を、北里大学医学部衛生学公衆衛生学講師の和田耕治氏が訳し、自身のWebサイトに掲載している。日経メディカル オンラインでは、同氏の許可の下、同サイトを編集、転載させていただいた。


津波の健康被害について

1.すぐに発生する健康上の懸念
・生存者の救出後にまず公衆衛生的観点から行うべきことは、きれいな飲料水、食料、避難所、けがのための医療の確保です。
・洪水により水や食糧などが汚染され、健康リスクが高まる可能性があります。
・避難所がなくなることで、寒さやその他の環境による健康影響が出ます。
・津波による死亡者の大半はで溺水によるものです。しかし、外傷も津波発生初期に発生します。がれき(家、木など)や汚水により、手足や頭部などのけがが発生します。人の多くいる地域では水が引く際にも多くの人がけがをする可能性があります。

2.二次的な影響の懸念
 自然災害により必ずしも伝染病の発生が増加するというわけではありません。しかし、汚染された水や食料、避難所や医療の不足によって、病気が悪化する可能性は高いです。腐乱した遺体が病気のアウトブレイクをおこす可能性は低いです。

3.長期的な懸念
・資金や物資の調達(災害の影響は長期間続きます。資金や物資の支援は被災して数カ月後に最も必要になります)
・感染症や昆虫媒介感染症(注:当該地域は少ないか?)の監視
・その他の地域からの救援と地元のニーズとの調整
・通常の医療サービス、水道、住宅、雇用の回復
・危機が沈静化した際の地域のメンタルや社会の回復の支援

復旧にかかわる人の安全性を担保するために
 洪水の復旧にかかわる人はその活動に際して、様々な危険有害要因に警戒する必要があります。

1.感電の危険性
 復旧活動に参加する者は、感電を防止するために次のことに注意することが求められます。
1)電気回路や電気機器の近くに水がある場合には、メーンのブレーカーまたはヒューズパネルの電源を切ります。電気は、専門の電気技師の確認が終わるまで入れません。もし電気がオフになっていることが確認されない場合には水があふれているところに入らない、また、地面のぬれているところで電気機器をさわらないようにします。切れた電線に絶対に触れないようにします。
2)発電機を使用して建物に電力を供給する場合は、メーンのブレーカーのスイッチまたはサービスパネルを、発電機の起動前に「オフ」にします。
3)電線が切れた地域で掃除、復旧作業などをする場合は電気会社に連絡し、送電の停止などを行います。頭上の送電線の近くではしごなどを動かす際には特に注意が必要で、不注意に接触しないよう細心の注意を払います。

2.一酸化炭素対策
 復旧活動では、石油燃料を使う電動ポンプや発電機を使用を使うことがあります。これらの装置は無色、無臭、かつ致命的な「一酸化炭素」を発生します。十分な換気を評価することは事実上不可能であり、こうした機械は屋外で使用し、屋内に持ち込まないようにします。

3.筋骨格系障害(腰痛など)
 復旧作業に際しては、手、腰、膝、肩などに深刻な筋骨格の障害を起こすことがあります。泥などを手で運んだり、建材を運んだりするときは特に腰痛への注意が必要です。こうした障害を予防するために2人以上のチームで担当し、1人当たり約25kg以上のものを運ぶ場合には機械を用います。

4.寒さ
 24℃以下の水に浸かって働くと体の熱が失われ、低体温になります。低体温のリスクを減らすためには、ゴムのブーツと暖かい服装のほか、単独作業をしない、水の外に頻回に出る、可能な限り乾いた洋服に着替えるといったことに気をつける必要があります。

5.重機の扱い(ブルドーザーなど)
 ブルドーザーなどの重機は、適切な教育を受けた人のみが操作します。

6.地盤の不安定性
 決して津波によって破壊された建物や地面が安定していると期待してはいけません。浸水した建物や津波に持ちこたえた建物も危険な可能性があります。専門家が確認する前に、津波で破壊された建物の中や周りで作業してはいけません。もし、当該建物が動いたり、変な音がしたらすぐに立ち退きます。