井上氏は血管外科医が持つ懸念に対して、「仙台厚生病院では運動療法や薬物療法で改善しなかった患者を血管内治療の対象にしている」と、まず説明した上で「確かにバイパス術の方が現時点では長期成績が良いが、熟練した血管外科医が充足している地域ばかりではないし、全身麻酔がかけられず、手術の適応にならない患者もいる。患者自身が、より低侵襲の治療を望むことが多いのも事実だ」と事情を話す。

課題もあるが新デバイス登場などで解決へ
 血管内治療はまだ、普及し始めたばかりで、発展途上な面があることは否めない。最も大きな問題はバイパス術に比べて再狭窄率が高いことだが、この点について阪大先進治療学教授で関西労災病院(兵庫県尼崎市)循環器科部長の南都伸介氏は「今後、長期成績は良くなるだろう。抗血小板薬の選択によって、再狭窄率を低く保てることが分かってきたからだ」と述べる。

 ほかにも、下肢動脈は冠動脈に比べて外力が加わりやすい性質があり、ステントを留置した場合、破損が起こりやすいという問題もある。しかしこれについても南都氏は「伸びやねじれに強いステントの開発が進んでいる。近い将来、解決される課題だろう」と説明する。

 日本独自の事情ではあるが、ステント留置の保険適応が下肢動脈領域ではまだなされていないことから、保険償還の判断が都道府県ごとに異なるという問題もある。これについては、今後、関連学会からも適応拡大に向けた動きがありそうだ。

 カテーテルインターベンションは冠動脈領域でも、最初から完成された治療法だったわけではない。医師の手技向上が図られるとともに、新しい抗血小板薬の承認、その併用についての知見、薬物溶出ステントの登場などによって次第に、定番の治療法になっていった。下肢ASOの血管内治療も、同様の流れが起こりそうな気配だ。



 国際ガイドラインの内容などをより詳しくまとめた記事を、『日経メディカル』最新号
(2008年8月10日発行)
に掲載しています。