「ABI測定の普及で下肢ASOの拾い上げが進んだ」と話す、仙台厚生病院循環器科主任部長の井上直人氏。

 心血管の狭窄・閉塞の治療法として定番化したカテーテルインターベンションによる血管内治療が、下肢の閉塞性動脈硬化症ASO)の治療法としても実施されるようになってきた。本格化したのは5年ほど前のことだ。

 「ASO自体が増えているが、特に最近治療件数が増えてきた要因として大きいのは、拾い上げが積極的に行なわれるようになったことだ」と仙台厚生病院(仙台市青葉区)循環器科主任部長の井上直人氏は言う。

 仙台厚生病院の循環器科では「歩くと足がいたみませんか」という問診と、足の脈を診る触診を、他の循環器疾患で来院した患者にも行っている。「心血管の狭窄・閉塞がある患者の少なくとも1割程度は、下肢ASOがあるようだ」(井上氏)。ASOを疑ったら、同院のバスキュラー・ラボでABI測定と血管エコーを施行して、ほとんどの場合、その日のうちに診断できる。

 仙台厚生病院の場合、治療に要する日数は最短でおおよそ3日。施行の前日に入院し、施行翌日に退院という流れだ。方法は、基本的には冠動脈の場合と同様で、狭窄、閉塞している部位に経皮的にバルーンを挿入して血管を拡張し、必要に応じてステントを留置する。さまざまな症例を合わせて、同院の下肢の血管内治療の治療成績は80%程度という。

 重症ASOの第1選択の治療法は、バイパス術だ。バイパス術と比べると血管内治療は低侵襲性なので、施行翌日から歩けるようになる点が大きなメリットといえる。歩行距離も大幅に伸びるなど、患者のQOL向上の効果は高いので「評判が広がり、市中の診療所などから患者を紹介されるケースが増えている」と井上氏は話す。

循環器医と血管外科医の間に残る議論


「血管内治療の実施によって、症状を悪化させてしまうリスクがあることを忘れてはならない」と述べる名古屋大血管外科教授の古森公浩氏。

 ただ、どのような症例を血管内治療の適応とするかについては、まだ、循環器医と血管外科医の間で、議論が続いている。名大血管外科教授の古森公浩氏は「十分な術前の病態の診断なしに、血管内治療が安易に実施されているのではないか」と危惧している。跛行患者では、その跛行距離にもよるが、まずは薬物療法や運動療法が第1選択だ。血管内治療の実施によって、症状を悪化させてしまうリスクがあることを忘れてはならない」と言う。

 血管外科医が懸念する別の「問題点」は、従来はバイパス術が第1選択だった下肢病変に対しても、血管内治療が行なわれることが多くなっていることだ。2007年に発表された下肢ASOの診断・治療の国際ガイドラインである「TASC」では、病変の部位や複雑さなどに応じてA〜Dの分類がされており、A、Bは基本的に血管内治療の適応、C、Dは基本的にバイパス術の適応。しかし最近は、C、Dの病変に対しても、血管内治療が施行されることが少なくない。