整形外科手術後の静脈血栓塞栓症の予防薬として、2つの抗凝固薬が登場した。2007年6月と08年4月にそれぞれ発売されたフォンダパリヌクス(商品名アリクストラ)とエノキサパリンクレキサン)だ。適応は、前者が下肢の整形外科手術を受けた患者、後者が股関節全置換術膝関節全置換術股関節骨折手術を受けた患者で、両方とも原則、術後24時間後から10〜14日間の皮下投与となっている。

 従来、抗凝固療法で勧められてきた未分画ヘパリンワルファリンは、欧米での使用実績を基に使われ、処方は各医師の判断による部分が大きかった。一方、2つの新薬は日本で初めて整形外科手術後の静脈血栓塞栓症の予防に関する治験が行われた。これにより、「確実で安全な抗凝固療法を行える道筋ができた」と、治験に参加した大阪厚生年金病院(大阪市福島区)整形外科部長の冨士武史氏は話す。

 年間300例近くの股関節全置換術を行う済生会山形済生病院(山形市)整形外科診療部長の石井政次氏も、予防効果をより高める手段として新薬に期待を寄せる。

 分子量の分布が広い未分画ヘパリンは様々な血液凝固因子に働き、患者間で薬効の差が大きい。一方、フォンダパリヌクスはXa因子のみに、エノキサパリンは一部トロンビンにも働くが、主にXaを阻害する(下表)。このため、「薬効が予測しやすく、モニタリングは必要ない」と石井氏。

 血中半減期も、未分画ヘパリンは1時間と短いのに対し、フォンダパリヌクスは17時間、エノキサパリンは3〜7時間と長い。つまり、投薬回数も少なくて済むわけだ。

表1 各種の抗凝固薬の比較