紆余曲折ありましたが、南相馬医師会長である高橋先生の多大なご理解とご協力を得て、なんとか形にすることができました。そもそも、当初より高橋先生からは良いことだから頑張ってやりなさい、と大変温かいお言葉を頂戴致しました。お陰さまで、11月26日、27日より寺内塚合仮設住宅を皮切りに集会所での接種を開始できる運びとなりました。年内に全ての仮設住宅を回ります。

 仮設住宅では、新たな問題も浮上してきております。いわゆるfrail elderlyである独居高齢者が多いのも事実ですが、高齢夫婦の二人暮らしにおいてDVやアルコール依存の問題が出てきています。昼間から大五郎のペットボトルを持ってフラフラしている高齢男性を見ると悲しくなります。現在、私も保健師、生活支援相談員の方々とこういった問題を共有させて頂いておりますが、非常に難しい問題です。また集会所のイベントに男性の方々の参加率が低い原因として、タバコが吸えないことが明るみに出てきました。今後は往診業務などを通じて、健康管理に加えてこれらの問題にも介入して参りたいと考えております。

 私は31歳の医師として、いま見ているのは20年後のこの国の医療なのではないかと考えております。喪失体験、失業、孤独を抱える仮設住宅の方々に接するにつけ、地域医療の本質である寄り添うことが必要だと感じます。先日、近隣の小野田病院の先生方にご挨拶させて頂きましたが、訪問看護や入院での協力を快諾して下さいました。今後はより一層地域の先生方との連携を深めて参りたいと考えております。

 最後に、僭越ながら私の好きな短編を共有させて頂きます。

“The Star Thrower” (Loren Eiseley著)

There was a man who was walking along a sandy beach where thousands of starfish had been washed up on the shore. He noticed a boy picking the starfish one by one and throwing them back into the ocean. The man observed the boy for a few minutes and then asked what he was doing. The boy replied that he was returning the starfish to the sea, otherwise they would die. The man asked how saving a few, when so many were doomed, would make any difference what-so-ever? The boy picked up a starfish and threw it back into the ocean and said "Made a difference for that one..." The man left the boy and went home, deep in thought of what the boy had said. He soon returned to the beach and spent the rest of the day helping the boy throw starfish in to the sea....

 ただ世界が流れているのを眺めて過ごす観察者でいることを選ばず、その世界の中で行動を起こし、何かを変える事を選んだ若者のお話です。震災原発事故以前から、私たちはカオスな世界の不確実性に耐えながら生きています。万が一のことを考えたら飛行機も乗れません。そんな世界でreasonableなrisk-takerとして生きる我々に、いつも力を与えてくれるのは、”It made a difference for that one.”という希望ではないでしょうか。