巨大津波で深刻な被害を受けた岩手県釜石市で、医療ボランティアとして活動した東京大学サステイナビリティ学修士2年の廣瀬雄大です。

 釜石市では、震災から50日を経た今でも、市職員がガレキ撤去や安否確認に追われています。一人でも多くのボランティアを全国に求めたい、それが釜石市災害対策本部の本音だと思います。ですが、全国メディアは同市の状況をほとんど報道していません。このため、ボランティアの人数が少なく、復旧作業が遅れがちになっています。

 たしかに、釜石は東京から560キロほどの、東北自動車道を下りてから険しい山道を越えなければたどり着けない地域ですが、あまりに情報が少ないのではないでしょうか。一人でも多くの方に状況を知ってもらい、それにより復旧への支援がさらに強化されることを期待して、同市の現況を報告したいと思います。

東北地方太平洋沖地震から約50日
 震災からこの50日間、主に陸上自衛隊第7師団災害派遣隊と釜石市災害対策本部職員が、全力で作業に取り組んでいるが、港湾地区は未だガレキの山である。YouTubeで注目を集めたあの大型貨物船も、釜石港湾合同庁舎前の道路に乗り上げ、座礁したままになっていた。

 「安否確認及び遺体回収作業のため人材を急募したが、高額の日給を申し出ても誰一人として応募がない。我々だけでは人手が足りないから作業がはかどらない」と市職員は話した。さらに、現場では、倒壊した家屋から出てくるアスベストや海底から運ばれた微細な泥が渾然一体となって空気中に舞っており、容易に呼吸器をやられてしまう。また、ほとんどの被災者は、自分の家の撤去作業に立ち会いを希望するから(行方不明者がまだ900人を超える状況で当然だ。家族が発見されるかも知れないのだから)、高齢者も多い立会人にも配慮しなくてはならない。作業がはかどらなくて当然と思った。

 また、別の職員は「工場からガスタンクなどが大量に流れてきており、危険物や毒物を含むため専門業者でないと手がつけられない」と話す。震災直後は、どれが危険物で何が汚染物質なのかもわからないまま撤去作業に取り組んでいたそうだが、国や専門家の呼び掛けにより、市職員による作業は中止されている。一方で、釜石市に撤去作業に来る専門業者は少なく、身動きの取れない日々が続いている。

現地での医療支援活動
 4月29日(金)から5月1日(日)にかけて、自らも被災者でありながら復旧活動に取り組む釜石市災害対策本部職員や、ガレキの中で不明者を捜して奔走する地元消防団員らの健康を守るため、JR東京総合病院の小林一彦医師と瀬戸健診クリニックが「釜石市災害対策本部特別健康診断」を行った。健診は、問診票記入、胸部レントゲン、血圧測定、医師による診察、血液検査の順で行われ、私は問診票の確認や血圧測定を任されることとなった。

 この健診には隠れた目的があり、それは自らを省みず頑張っておられる関係者の方々に、問診の合間に感謝とお礼のメッセージを(それとなく)伝える、というものであった。これは医師でもある福島県相馬市長の立谷秀清氏の発案で、実施するのは相馬市に続き釜石市で2件目とのこと。相馬市では高評価を得たらしい。私もすごく良い活動だと思った。ところが、このプロジェクトの肝といってもよいその部分が、私に託されることになったのである。

 健診が始まると、元気なあいさつで入室してくる方もおられたが、ストレスと疲労が溜まった表情の方が多いと思った。「あれ、いつもよりも血圧が高い気が???今の最高血圧は通常の20くらいは高いです。いやになっちゃいますね」血圧を測定していると、ほとんどの方はこうつぶやき、これを呼び水に世間話が始まる。少しでもストレスの軽減に繋がればと思い、必死に耳を傾けた。