3月17日、原発問題で揺れる福島県いわき市から、透析を続けるため、410名の患者が東京へと避難した。極端な話、ADLが自立した患者であれば、詳細な紹介状を書けば事が足りる。どのような患者が集団医療疎開を必要とし、その現場ではどのような問題が発生するのか、避難患者の状況を知るべくオリンピック記念青少年総合センター(東京都渋谷区代々木)を訪問した。

 この原稿を作成するに当たり、ボランティアとして協力してくれた西尾浩登さんに感謝したい。司法試験に合格し、司法修習を待っている前途有望な若者だ。国難と聞いて、被災者救済にはせ参じてくれた。

どのような患者か
 オリンピックセンターには、7つの透析クリニックから計213名の患者と、家族の付き添いが10名、また各々の施設から医療スタッフ39名が宿泊されていた。当初は300名の予定だったのだが、約100名が同所での治療継続が困難とすぐに判断され、ほかの施設に入院・入所となっていた。

 最高齢の患者は94歳で、ほとんどの方が60歳代半ば以上と、比較的高齢である。213名中、歩行困難等で車いすを使用している方が10数名、また、約半数の方が老健レベルの認知症があり、ADL自立困難と判断されていた。残り半数の方々は、自宅では普通に生活出来ていたのかもしれない。しかし、家族や住み慣れた町と離れては、外出もままならない様子だった。

 まだ混乱が続いているのだろう、受け入れ透析施設の数を質問したが、回答は得られなかった。遠くは渋谷区から江戸川区まで通院している。交通手段はタクシーで、都からチケットが支給されていた。

住環境と運営上の問題点
 避難所といえば、学校の体育館のイメージがあるが、オリンピックセンターの住環境は悪くなかった。一言で言えば、運動部の合宿所である。実際、全国各地から運動部の合宿を引き受けており、企業の新人研修などでも使用されている施設である。

 それでも、やはり長期滞在を前提とした作りではない。2〜4人部屋での生活が長期化すれば、ストレスがたまるのではないか。ましてや食事に関しては、ちょっとしたアレンジさえ期待出来ない。

 今回、最大の問題は、同所を使用できる期間が3月24日までと限られていることだ。22日には近隣の教育国際センターが100名を受け入れる予定であるが、残りの方については未定である。

 ここで注意しなければならないのは、集団医療疎開の現場においても、運営は各々、元の透析施設のスタッフによって行われる、ということだ。ウエイトの管理から食事指導、急変時の処置などは、つきあいの長いスタッフでないと対応できない。だから、宿泊施設も透析施設ごとに割り振る以外ないので、どこの施設に移ればよいか、患者+付き添い家族+医療スタッフの数を元に検討すべきだ。しかし、残念ながら行政はそのような視点を欠いており、あくまで患者数のみで割り振りを考えているようだ。

 また、当然ながら、同行している医療スタッフにも生活がある。現在は非常時であり、24時間寝食を共にしているが、長期間この体制は維持できない。交代時など、医療スタッフの人数に幅があることも認識していただきたい。7つの施設のうち、最も患者が多い施設では66名、少ない施設では1名である。細かな調整が必要である。

 オリンピックセンターが24日までしか使用できない理由は、企業の新人研修などの予定が入っているからのようだが、もう少し都合がつかないものか。相手先に交渉する余地がありそうだが、都、オリンピックセンター、先約相手のどこから話を通せばよいか分からず、難航している。

医療スタッフへの配慮は十分か
 医療スタッフの献身的な働きには驚かされた。聞けばご自身が被災している方も多く、ご自宅が避難地域に当たる方が大半である。表には出さないが、ご家族のことも気掛かりであろう。

 また、給与のことなども全く検討されていないようだ。雰囲気から察するに、現場スタッフから要求は出てこないのではないか。あるいは院長のポケットマネーから支払われることになるのかもしれない。保険診療として算定できるなど調整が必須である。

急変時対応を可能とする関係性構築を
 避難後1回目の透析が行われ、患者に笑顔が戻ったとのことである。断水の影響からか、大半がドライウェットを割っていたそうだ。しかし、今後、問題が長期化するにあたり、心不全など急変時の対応が問題となるだろう。

 繰り返すが、集団医療疎開を必要とする患者は、認知症などなんらかのADL問題を抱える患者である。そのため、現地から医療スタッフが付き添っており、急変時、まず対応するのはその医療スタッフである。急変時、患者を搬送する場合、我々は長年顔が見える距離で培ってきた信頼関係に依存する。そのような関係がない場合、119番通報で十分と言えるのか。ささやかな懇親会などでもよい、周辺施設との関係性の構築への支援が必要である。