震災の被災地においては、上下水道などライフラインの途絶により、衛生状態が急激に悪化するものと考えられます。ピークは過ぎていたものの、完全には鎮静化していなかったインフルエンザやノロウイルスが避難所などで流行してしまう恐れは、残念ながら小さくありません。アルコール手指消毒薬や、マスクなどの資材も供給が困難な状況では、対策は極めて困難であろうと思います。ですが、以下に、感染対策に携わる者として、思い付く最低限のポイントを記します。

 1)咳症状がある場合は、決して他人に向って咳を吐き掛けないように配慮をお願いします。マスクは十分量が確保できないでしょうから、咳症状や発熱がある方に優先的に着用していただくことをお勧めします。咳やくしゃみをするときにはティッシュやハンカチで口と鼻を覆い、他人から顔をそむけるようにお願いします(咳やくしゃみを手で受けてしまうと、その後で触ったところにウイルスなどを拡げてしまう可能性があります)。

 2)咳症状や発熱、吐き気・嘔吐・下痢症状がある方は、できれば1メートル 以上の距離を置いてお休みいただきたいところですが、場所に限りもあるでしょう。少なくとも乳幼児や高齢者、免疫が低下する基礎疾患がある方からは離れるようなヒトの配置をお勧めします。

 3)手洗いの励行をお勧めしたいところですが、断水などで難しい場合、ある程度まで汚れを除いた後であればアルコール消毒で十分です。アルコール消毒が可能であれば、食事前と排便後に優先的に使用することをお勧めします。

 なお、国立感染症研究所感染症情報センターからも東北地方太平洋沖地震関連情報(http://idsc.nih.go.jp/earthquake2011/index.html)が提供されています。被災地からではインターネットへのアクセスも困難であるとは考えますが、今後も必要な情報を提供していただけるものと期待されます。

 未曾有の国難に際し、多くの方々がそれぞれの現場で奮闘されていることに最大限の敬意を表します。

 栃木県は被災地ではありますが、幸いなことに人的被害はそれ程には大きくありませんでした。しかし、東北地方の激甚被災地から患者を受け入れる余裕はないかもしれません。私たち栃木県の医療従事者は、少なくとも栃木県内の医療を県内で維持したいと考えています。自治医大病院では、建築構造に大きな被害を受けた大田原赤十字病院、隣県ですが筑西市民病院からも転院症例を受け入れました。それぞれが地域医療の現場を守るため、出来る限りの無理をして、それぞれの責務を果しています。

 「神は乗り越えられる試練しか与えない」というフレーズはマンガやドラマの 『仁―JIN―』 のおかげですっかり有名になりました。みなで、この苦境を乗り越えましょう。