放射線曝露は各臓器に短期的または長期的な影響をもたらす。放射線曝露の影響に関する総合的なレビューはIAEA(国際原子力機関)とWHOによって行われているため、ここでは福島第一原発の事故によりメディアの関心を集めている急性放射線障害と長期的な癌リスク上昇に焦点を絞ってレビューを実施した。
 
■急性放射線障害とその治療
 全身またはほぼ全身が1グレイを超える放射線の曝露を1回受けた場合に、急性放射線障害が発生する可能性がある。現在利用可能な急性放射線障害に関する情報のほとんどは、被曝事故の被害者となった800人を超える患者の臨床データを集めたSEARCH(a system for evaluation and archiving of radiation accidents based on case histories)データベースに由来する。

 これによると、過去に発生した原子炉事故で急性放射線障害と診断された一般人はいない。チェルノブイリの事故の際に134人が急性放射線障害となったが、全員が原発作業員か救急チームのメンバーだった。

 全身の高線量曝露の短期的な障害は主に、血液/骨髄、消化管、皮膚などに現れる。チェルノブイリ事故では134人全員に骨髄抑制が見られた。19人が広範な放射性皮膚炎、15人が重症の消化管障害を呈した。低エネルギーのγ線とβ線は主に皮膚で吸収されるため、皮膚症状を引き起こす。チェルノブイリ事故では、一部の患者の皮膚線量は骨髄線量の10〜30倍だった。

 なお、全身線量が20グレイを超えると重症の急性神経血管障害が発生するが、チェルノブイリでは曝露者の吸収線量の最高値は16グレイだった。

 急性放射線障害は前駆期、潜伏期、発症期の3段階に分けられる。各段階の血液/骨髄、消化管、神経系の症状と持続期間は被曝線量によって異なる。

 放射線に曝露した患者の治療を行う場合、最初に行うべきは生命を脅かす可能性のある外傷や熱傷などの処置だ。次に、利用可能な除染対策を用いて外部汚染と内部汚染に対処する。3番目に、急性放射線障害が疑われるケースについて、臨床症状と検査値に基づいて全身の曝露線量を推定し治療を選択する。

 全身の曝露が2グレイ未満であれば、必要となるのは悪心や嘔吐を軽減するための対症療法のみだろう。

 2グレイを超える曝露があれば、主に骨髄抑制に対する処置を行う。抗菌薬などを使った感染予防や、造血成長因子の投与、さらには骨髄移植が行われる場合もある。だが、骨髄移植の有効性については議論がある。これまでに行われた、放射線被曝事故患者への骨髄移植の転帰が不良であったためだ。チェルノブイリ事故後には13人に骨髄移植が行われたが、長期生存が可能だったのは2人のみで、11人は死亡した。うち2人については移植の合併症が主な死因と考えられている。消化管障害には支持療法を用いる。予防的なプロバイオティクスの適用も有用かも知れない。皮膚障害には、二次感染を防ぎつつ、急性と慢性の炎症を抑えるためにステロイドを局所適用する。