JMATの派遣状況を説明する日本医師会長の横倉義武氏

 日本医師会は4月20日に記者会見を開催し、熊本地震の被災地への日本医師会災害医療チームJMAT)の派遣状況を報告した。JMATは4月20日時点で、37隊(152人)が派遣中。46隊(195人)が派遣に向けて準備中、27隊(99人)が派遣を終了している。

 日本医師会長の横倉義武氏は、「東日本大震災の教訓から、行政ならびに各医療支援団体ともに迅速な対応ができるようになっていた。厚労省が発災直後から現地に職員を派遣していたことで、現地の状況が的確に把握できた」と報告した。

 JMATは日本医師会が都道府県医師会の協力を得て、被災地に派遣する医療チームのこと。避難所などの医療・健康管理活動を中心にし、災害急性期以降の医療支援を担う。JMATは現地の医療ニーズを踏まえ、連続的かつ計画的に支援チームを派遣すべく、各都道府県の医師会ごとにスケジュールを組んでいる。

 現在は、災害時派遣医療チームDMAT)による支援後の避難者の健康管理・生活環境の改善などを支援するため、各支援団体が取り組みを始めている状況。被災地のニーズに応じて長期的な医療支援を行うために設けられた被災者健康支援連絡協議会のメーリングリストなどを活用し、「現地の医療ニーズを把握しながら、各団体が協力しながら支援を続けていきたい」と横倉氏は述べた。

 現地の医療状況について、横倉氏は「深部静脈血栓症(いわゆるエコノミークラス症候群)に対して注意喚起をしていたが、残念なことに3人の方が重篤な状態になってしまった。避難生活の中で二次的に生じる疾病の予防も必要となっている」と説明。

 そして、「東日本大震災との違いは、避難所に多くの高齢者がいること。生活支援と健康管理がこれからの課題となる。特に避難所生活は認知症の発症・症状悪化が促進される環境とも言える。新たな疾病の発症を予防するためにも、生活環境をいかに改善していくかが重要になる」と話した。

 支援状況については、「避難所が相当数あり、1つのチームが5カ所(患者数は合計で約1000人程度)の避難所をカバーしている状況だ。現時点では人的リソースや薬剤が不足している。しばらくは支援チームを増やす必要があるだろう。だが、熊本市内には医療機関が多く、医療資源は豊富だ。ライフラインが改善すれば、現地の医療体制はしっかりと機能するだろう。現地のその時々の状況を鑑みつつ、どの程度の人数を派遣するか、また支援をいつまで継続するかを検討しなければならない」と説明した。

 日本医師会常任理事の石井正三氏も、「医療チームが支援を始めたことで状況は改善傾向にある。インフラが改善すれば、支援要員の派遣を増やす必要はなくなる可能性もある。余震が生じるかなどの兼ね合いもあるが、状況に応じた対応が求められている」と説明した。

 現地からの声としては、「薬剤が足りないという声が上がっている。だが、震災後すぐに医薬品卸が対応を始めており、ニーズに即した対処はできている。また、トイレが使えない避難所があり、簡易トイレの設置などを実施したという話も聞いている。ノロウイルスが流行しているという報道もある。避難所の衛生面、生活面での支援も必要となる」と横倉氏は述べた。

 横倉氏によると、JMAT派遣までの経緯は以下の通り。

 4月14日の地震発生数分後から、支援の必要性を考慮し、現地の情報収集を開始。翌15日には、塩崎恭久厚労相から支援要請があり、午前9時にその旨を医療支援を行う関連団体に周知した。

 14日時点では被害が限局していたため、九州の各医師会からの派遣を基本とした対応で対処できると判断。他の都道府県には協力要請をする程度に留めていた。

 しかし、16日に本震が発生。広域な支援の必要性があると判断し、全国規模でJMATの派遣を行うことを決めた。

 そして、日本医師会、日本歯科医師会、日本薬剤師会、日本看護協会をはじめとする19組織(38団体)からなる被災者健康支援連絡協議会を急遽開催。4月18日の同会議では、厚労省、総務省を含む関係4省庁からの現状報告を受け、各医療団体がこれまで実施してきた支援活動内容を報告。今後、更なる情報収集が必要だろうという意見が示された。

 地震発生当初の支援は九州地方の各県からの派遣を優先。被災地を南北に分け、それぞれ支援チームを派遣している。なお、阿蘇地域へのJMATの派遣は立ち入りが困難なため、今後の状況を見て検討する方針だ。