研究班では、まず診断基準の対象となる疾患概念を明確化。「現在、脳脊髄液量を客観的に測定する方法はなく、現在の診断法で脳脊髄液が減少しているかどうかは診断できない」(研究班分担研究者の山形大総合医学教育センター教授・脳神経外科科長の佐藤慎哉氏)ことから、「脳脊髄液減少症」ではなく、画像検査上で髄液漏出所見が認められる「脳脊髄液漏出症」を対象とした診断基準を作ることに決めた。

 また海外では最近、疾患の本態は髄液漏出であることから「脳脊髄液漏出症(CSF leak)」という疾患名の使用が提唱されている(Schievink WI. Spontaneous spinal cerebrospinal fluid leaks. Cephalalgia. 2008;28:1345-56.)。国際疾病分類(ICD-10)やNIH(米国立衛生研究所)のWebサイト「MedlinePlus」にも「CSF leak」が掲載されているなど、「『脳脊髄液漏出症』は世界的にも認められている疾患名である」(佐藤氏)とした。

 基準では、CTミエログラフィー、脊髄MRI/MRミエログラフィー、RI脳槽シンチグラフィーの3つの検査法を挙げ、それぞれの画像判定基準と解釈を記述。それらの判定基準による判定結果を組み合わせた脳脊髄液漏出症の画像診断基準を定めた。

 例えば、CTミエログラフィーで硬膜の欠損やクモ膜下腔と連続する硬膜外造影剤漏出所見が特定できれば、脳脊髄液漏出『確定』と診断する。また、CTミエログラフィーで硬膜外に造影剤の漏出を確認できた場合や、脊髄MRI/MRミエログラフィーで病変が造影されず、かつクモ膜下腔と連続している場合、脳脊髄液漏出『確実』と判断する。RI脳槽シンチグラフィーでは、片側限局性のRI異常集積かつ円蓋部のRI集積遅延(脳脊髄液循環不全)が認められた場合、脳脊髄液漏出『確実』と判断する。

 実際、全国の施設から起立性頭痛の患者100例を登録し、頭部と脊椎の単純・造影MRIとRI脳槽シンチグラフィーを行い、画像を総合的に判定した結果、16例に確実な髄液漏出が認められた。そのうち外傷が誘因・原因と考えられるケースも5例あった。 
 
 なお今回の診断基準は、関連8学会(日本脳神経外科学会、日本神経学会、日本整形外科学会、日本頭痛学会、日本脳神経外傷学会、日本脊髄外科学会、日本脊椎脊髄病学会、日本脊髄障害医学会)の承認・了承を受けた正式な診断基準であるという。

 研究代表者の嘉山氏は、「当初、患者が50万人いると主張するグループがいる一方、いや1例もいないと主張するグループもいて診断基準をまとめるのは大変だった。そこで研究班では、個人の経験や1施設の報告ではなく、できるだけ科学的な方法とエビデンスに基づいて診断基準を作ることを目指した。脳脊髄液漏出を完全に証明できない周辺に位置する病態についても今後検討を進めていきたい」と話している。