研究班研究代表者の嘉山孝正氏。

 脳脊髄液の減少や低髄液圧により起立性頭痛やめまい、全身倦怠感などが起こるとされる病態について、厚生労働省の研究班は、CT・MRIなどで脊髄液の漏出が確実に認められる場合を「脳脊髄液漏出症」と新たに定義し、その診断基準を決定した。第70回日本脳神経外科学会学術総会(10月12〜14日、横浜市)の最終日に、同会会長で研究班研究代表者の嘉山孝正氏らが記者会見で明らかにした。

 嘉山氏らは今後、「脳脊髄液漏出症」と診断された患者に対する硬膜外自家血注入(ブラッドパッチ)などの治療法を「先進医療」として申請し、保険適用を目指してその有効性と安全性を検討していく考えも示した。

 この病態をめぐっては、「脳脊髄液減少症研究会」が2007年に独自の診断基準を作成している。交通事故などを含む外傷を契機に脳脊髄液が漏出し減少することで頭痛や頸部痛、めまい、耳鳴り、視機能障害、倦怠感などの症状を呈する病態を「脳脊髄液減少症」と定義。最も信頼性の高い画像診断法としてRI脳槽・脊髄液腔シンチグラフィーを位置づけている。

 また、同研究会のガイドラインは、交通事故などに伴う頸椎捻挫やむち打ち症によっても脳脊髄液減少症が起こり得るとしている。このため、むち打ち後遺症などの患者団体が、後遺症は髄液漏れによるものとして昨年、治療法の保険適用を求める約10万人の署名を集めて、厚労大臣に提出したことは記憶に新しい。

 しかし、保険病名や国際疾病分類に脳脊髄液減少症という病名はなく、その疾患定義や診断法に疑問を呈する専門家は多い。交通事故後、脳脊髄液減少症と診断された患者の検査・治療費の支払いを損害保険会社が拒否するケースも少なくない。

 国際頭痛分類第2版には、起立性頭痛もしくは体位を変えることで症状が増悪することを前提基準とした「特発性低髄液圧性頭痛」の診断基準がある。日本脳神経外傷学会は、それに従って「低髄液圧症候群」の診断基準を作成しているが、外傷後に低髄液圧症候群が発症することは極めてまれだとしている。

 そこで2007年に、学会の垣根を越えた関連学会合同のガイドラインを作成することを目的に、厚生労働科学研究費補助金「脳脊髄液減少症の診断・治療の確立に関する研究班」(研究代表者:国立がん研究センター理事長の嘉山孝正氏)が組織された。