震災後の肺炎入院患者について報告した気仙沼市立病院呼吸器科の冲永壮治氏。

 6月17日、東京都新宿区で開催された第53回日本老年医学会学術集会のパネルディスカッション「高齢者災害時医療―避難所生活から高齢者をどう守るか―」で、気仙沼市立病院呼吸器科の冲永壮治氏らは、震災後、同病院に肺炎で入院した患者の傾向や臨床像などについて報告した。

 同病院呼吸器科の大東久佳氏は、カルテの記載や画像所見などから肺炎と診断された入院患者を抽出。昨年3月11〜31日までと、東日本大震災が起きた2011年3月11〜31日までの症例数を比較した。その結果、昨年は12人だった入院患者が震災後は56人に達しており、震災を機に肺炎の入院患者が増加していることが分かった。

 震災後、肺炎で入院した患者を分析したところ、70歳以上が82%、75歳以上が73%を占め、高齢者が多かった。患者の入院経路を調べたところ、避難所からが25人、老人保健施設など高齢者施設からが11人を占め、自宅や他院からの転院よりも多い傾向にあった。

 56人の入院患者の予後は、18人が死亡、3人は転院して不明。入院経路別に患者の予後を分析してみると、避難所からの入院患者の死亡率は20%(25人中5人)、自宅からは30%(10人中3人)だったのに対し、施設からは68%(11人中7人)と、施設からの入院患者の死亡率が際立って高いことが判明した。その背景について冲永氏は、「施設に入所している高齢者はもともと抵抗力がない上に、震災時、津波で濡れた衣服をそのまま着てすごした人が少なくなかったためではないか」と分析した。

 また、こうした高齢者の肺炎の特徴について同氏は、「溺水が関与した津波肺は少なく、むしろ通常見られる呼吸器感染症が多発した印象だ」と語った。起因菌も市中肺炎や医療・介護関連肺炎などと大きく変わらない分布で、インフルエンザの流行も散発にとどまっていたという。

 ただ、一部の症例においては、胸部CT像でびまん性汎細気管支炎(DPB)様の小葉中心性の小粒状陰影が特徴的な呼吸器感染症が認められた。被災地のほかの医療機関からも類似症例の報告があることから、東日本大震災に関連した特徴的な肺炎の1つといえそうだ。

 避難所で多発する肺炎に対して早期に対応するため、冲永氏は医療支援チーム向けに、肺炎を疑う所見や重症度の目安、病院への搬送基準などについて簡単にまとめたガイドラインを作成した。合わせて、肺炎を疑った際、基礎疾患のない患者、慢性呼吸器疾患がある患者、腎機能低下疑いの患者、非定型肺炎疑いの患者など、患者に合わせて起炎菌不明時の経験的治療法(empiric therapy)が行えるよう、抗菌薬の使用法についても記載。3月下旬から避難所などで疑い症例に治療ができるようにした。

 ただ、冲永氏は「高齢者において誤嚥性肺炎は大きな問題だが、誤嚥性肺炎に対するempiric therapyをガイドラインに入れることができなかった。そもそも避難所で誤嚥性肺炎が治療できるのかといった問題がある」と指摘。被災地で増える高齢患者の肺炎への対応については、今後も議論が続けられることになりそうだ。