広島・長崎の原爆被爆者では200mSv以上の被曝線量で、線量の増加と発がんリスクの増加が直線的比例関係になり、成人が1000mSvを一度に被曝すると、全固形癌の発癌リスクは1.6倍増加する。これは非喫煙者と比べた場合の喫煙者のリスクの増加とほぼ同程度であり、「現時点で住民の方が受けたと考えられる被曝による影響は、それよりはるかに低い値になると予測される」(祖父江氏)としている。

 ただし、100mSv以下の線量では発がんリスクとの比例関係は認められなくなる。また、広島・長崎の原爆被曝は瞬時の被爆であり、放射線暴露が長期にわたる場合、同じ累積線量による発がん影響は少なくなるという。

 中央病院放射線科診断科長の荒井保明氏は、食品・水への放射線影響に言及。最近都内の浄水場で検出された放射性ヨウ素(最高測定値210Bq/kg)を線量換算すると、約216リットルを飲んで1mSv、0.31Bq/kgなら約169トンを飲んで1mSvになるにすぎない。関東の農作物で測定された放射性ヨウ素(4300Bq/kg)も、約10kg食べて1mSvに相当する程度だという。また農作物に付着した放射性ヨウ素は水洗いで減る上、半減期が8日なので時間経過とともに減少するとした。

 荒井氏は、「これまでに検出された放射線レベルで見る限り、都内の食品・水を摂取して健康被害が生じる可能性は、乳幼児を除けばない。今後も正しい情報に基づいて科学的に判断し、落ち着いて対処することが大切だ」と述べた。

 最後に同センター理事長の嘉山孝正氏は、「現在、暫定的に定められている飲食物の摂取制限の指標については十分すぎるほど安全なレベルである。放射性物質に汚染されたと考えられる飲食物については、放射性物質の半減期を考えれば、保存の方法を工夫すれば十分に利用可能である。今後、放射線量については定点でかつ定期的に測定し、放射性ヨウ素や放射性セシウムなどの放射性物質の種類も定期的に発表するなど正確な情報を経時的に提供することで、国民が安全であることを理解し、安心が得られると考えられる」との見解を示した。

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