糖尿病患者の平均死亡年齢は延長傾向にあるものの、一般人口の平均寿命と比較すると男性で約10歳、女性で13歳短く、大きなギャップが存在する。高齢化が進行していることを考えると、高齢者糖尿病の適切な管理がいっそう強く求められる。2010年6月24日、神戸国際会議場で開催された第52回日本老年医学会学術集会のランチョンセミナーにおいて、大阪大学大学院医学系研究科老年・腎臓内科学講師の藤澤智巳氏は、高齢者においても糖尿病と診断された直後から血糖コントロールに努めることの重要性を明らかにしたうえで、安全かつ有効に血糖コントロールを行うための留意点、ならびにSU薬の有用性などについて解説した。

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 藤澤氏はまず、2型糖尿病患者を対象に、移動性低下およびADL低下の予知マーカーを検討したThe Fremantle Diabetes Studyを紹介し、細小血管障害、大血管障害を含む糖尿病合併症が、寝たきりおよびADL低下の大きな要因になることを示唆した。一方、糖尿病患者と認知症との関連については、平均年齢65歳の2型糖尿病患者を対象とした試験で、重症低血糖を起こした回数が多い患者ほど認知症と診断されるリスクが高かったことを示し、「将来寝たきりを回避するには、十分な血糖コントロールを行って糖尿病合併症を予防する必要がある。血糖コントロールに際しては、認知機能低下ならびに冠動脈疾患の発症を防ぐため、低血糖を起こさずに血糖を低下させることが重要である」と指摘した。

 では、高齢者に対する血糖コントロールはいかにあるべきか──。藤澤氏は、ACCORD試験とVADT試験では強化療法群で重症低血糖の頻度が高く、体重増加がみられており、厳格な血糖コントロールの副産物が不良な転帰につながった可能性が示唆されていること、またACCORD試験において通常療法群でHbA1c 7〜8%(JDS値に換算すると6.6〜7.6%)で死亡が少なかったことなどから、「高齢者には、低血糖を起こさないよう、ゆっくりと慎重に血糖を下げていくことが重要である」と語った。

 現在、わが国ではSU薬、ビグアナイド薬、αグルコシダーゼ阻害薬、チアゾリジン薬、グリニド薬などの経口血糖降下薬が使用可能である。これらは、各病態に応じて使用されているが、高齢者糖尿病ではどのような薬剤選択が望ましいか──。

 SU薬は膵β細胞膜上のSU受容体に結合することでKATPチャネルを閉鎖させ、インスリン分泌を促進し、良好な血糖降下作用を示す。第三世代SU薬のグリメピリド(アマリール)に関しては、2型糖尿病に対する有効性と安全性について豊富なエビデンスが示されている。優れたHbA1c低下効果が認められており、食事療法で血糖コントロールが不十分な2型糖尿病患者77例を対象とした、プラセボとの二重盲検比較試験では、グリメピリド1〜4mg/日を12週間経口投与した結果、HbA1cは8.3%から6.9%へと、プラセボ群に比べ有意に低下した(p<0.0001, Wilcoxon 検定)。また、グリベンクラミドに比べて少ないインスリン分泌刺激で同程度の血糖降下作用を示すことが知られている。2型糖尿病モデルラットを用いたMoriらの検討によると、グリメピリドは脂質代謝にも影響を及ぼし、脂肪細胞を小型化してインスリン感受性の改善に働く可能性が示唆されている。つまり、2型糖尿病に対し、グリメピリドはインスリン分泌促進ならびにインスリン感受性改善という2つの作用機序により優れた血糖降下作用を発揮すると考えられる。

 SU薬に関しては、二次無効、低血糖、体重増加、心筋虚血プレコンディショニングの障害などを懸念する声がある。これらについて藤澤氏は次のように指摘した。
<二次無効>糖毒性による悪循環の結果、慢性高血糖の状態となり、SU薬の二次無効が引き起こされると考えられる。つまり、二次無効は高血糖が主因と考えられ、SU薬そのものが膵β細胞を疲弊させるわけではない。
<低血糖>グリメピリドでは有意に低血糖累積発現率が低いことが二重盲検比較試験で示されている(p=0.014、Wilcoxon検定)。グリメピリドはブドウ糖濃度が高い時ほど膵β細胞分泌刺激効果が高いことが示されており、これが低血糖を起こしにくい理由の一つではないかと推察される。
<体重増加>他のSU薬からグリメピリドへ変更した後の体重変化を検討した藤澤らのグループの研究では、高齢者では体重増加をきたしにくいことが示された(図)。
<心筋虚血プレコンディショニングの障害>グリメピリドはグリベンクラミドと比べ、心筋虚血プレコンディショニングへの悪影響が少ないことが示唆されている。

 最後に藤澤氏は、「高齢者糖尿病においては、個々の病態を把握したうえで、HbA1c (国際標準値)7%前後(JDS値で6.6%前後)を、身体機能や病気に対する抵抗力が低下した高齢者ではHbA1c(国際標準値)8%前後(JDS値で7.6%前後)を目標に、低血糖の出現に細心の注意を払い、グリメピリドなどを用いて有効かつ安全に血糖を降下させることが望まれる」と講演を結んだ。

※アマリールの詳細は添付文書(PDF)をご覧ください。