国立健康栄養研究所の宮地元彦氏

 TVゲームを毎日30分楽しめば、健康維持に必要な運動量を確保できる――日本からのこんな研究成果が米国で発表され、研究者や現地メディアの注目を集めた。国立健康栄養研究所の宮地元彦氏らが11月16日、フロリダ州オーランドで開催された米国心臓協会・年次学術集会AHA2009)で報告したもの。

 宮地氏らは、任天堂のゲーム機Wii用のゲームソフト「WiiSports」と「WiiFit plus」が比較的大きな動作でプレイすることに着目し、個々の種目のエネルギー消費量計測を試みた。

 対象は25歳から44歳までの慢性疾患などを有しない12人(男性7人、女性5人、平均34歳)。対象者の平均身長は167.4±7.6cm、平均体重64.3±15.0kg、平均体脂肪率は22.3±3.9%だった。

 測定には、代謝測定室(ヒューマンカロリーメーター)と呼ばれる装置を用いた。これは、6畳程度の気密室で酸素濃度と二酸化炭素濃度の変化から、エネルギー消費量を計測するもの。室内にはベッド、トイレ、机、ゲーム機とテレビ、電話が設置された。被験者には少なくとも5時間前から、水分摂取を除いて絶食させた上で試験を実施した。

 被験者には、WiiFit plusのバランス運動(16種目)と筋力トレーニング(15種目)、WiiFit plusのヨガ(18種目)と有酸素運動(14種目)、WiiSportsの全種目(ゴルフ、スキー、テニス、ボクシング、ボーリング)を3日間に分けてプレイしてもらい、坐位安静時と個々の種目のエネルギー消費量を計測した。各種目は安定した測定値を得るため、8分間以上継続してプレイし、次の種目との間には適切な休息をとった。

 その結果、Wiifit plusのヨガ種目の平均エネルギー消費量が2.1±0.6METs、バランス運動種目が2.0±0.6METs、筋トレ種目が3.2±1.2METs、有酸素運動種目が3.4±0.9METs、WiiSports各種目の平均が3.0±0.9METsだった。ヨガとバランス運動は、他の筋トレ、有酸素運動、WiiSportsの各種目に比べ、有意にエネルギー消費量が低かった。

 最も強度が高かったのは、筋トレ種目の「シングルアームスタンド」で5.6METs、最も低かったのはバランス運動種目の「ロータスフォーカス(瞑想)」で1.3METsだった。

 米国のAHAと米国スポーツ医学会(ACSM:American College of Sports Meditine)のガイドラインでは、運動を軽度(3METs未満)、中等度(3METs以上6METs以下)、強度(6METs超)に分け、成人には中等度の運動を1日30分、週5日実施することを推奨している。今回計測した全68種目のうち46種目(67%)は3METs未満で22種目(33%)は3METs以上6METs未満であり、適切な種目を選べば、ジョギングなどと同程度の運動ができる計算だ。

 AHAは宮地氏の発表を報道発表資料に掲載したほか、記者会見も設定するなど、大きく取り上げ、ABCニュースやロイター電など米大手メディアもこぞってニュースを流した。肥満大国ならではの高い関心が集まったようだ。

 宮地氏は、「日本のフィットネス人口は約350万人で、ごく一部に過ぎない。WiiFitのようなゲームは、エクササイズに関心を持つ入口になる。高齢者の転倒予防、介護予防としても有用ではないか」と指摘した上で、「健康作りのために作ったものは面白くない。任天堂にはエンタテインメント性を追求してほしい、それが普及につながる」と期待をみせた。さらに「近く、メタボリックシンドロームを有する群や高齢者の介護予防に対する無作為化介入研究を実施予定で、既に準備を進めている」とした。


【訂正】
本文の最終段落に、「既に倫理委員会の承認を得ている」とありましたが、正しくは「既に準備を進めている」でした。訂正します。