急性脳梗塞を発症した場合、血流不全から低酸素状態となって乳酸が蓄積し、その後減少していくことが知られている。MRIによる核磁気共鳴(MRIスペクトロスコピー)を用いた発症直後の前向き観察研究により、周辺領域では次第に乳酸が減少していくものの、梗塞の中心部位では、12時間を超えてなお、高濃度で乳酸が滞留することが確認された。英エジンバラ大学臨床神経学のBartosz Karaszewski氏らが、5月13日から開催された欧州脳卒中学会で報告した。

 研究グループは、前方循環領域の脳梗塞を急性発症した39人の患者を対象として、発症後1.5〜26時間にMRスペクトロスコピーを施行し、乳酸濃度を測定した。部位の判定にはMRIの拡散強調画像(DWI)を用いて、DAL(確定的異常部位)、PAL(異常疑い部位)、PAL+(ペナンブラ領域)、INL(同側正常部位)、CNL(対側正常部位)に分類した。

 その結果、発症12時間未満に測定した患者の部位別の乳酸濃度の平均値は、正常領域であるINLとCNLではそれぞれ12.66、7.9(単位は機器のばらつきを正規化した値、以下同)、PAL+では17.21と正常域に近かったのに対し、梗塞の中心部位に相当するDALでは43.35、PALでは29.09と3〜4倍だった。

 一方、発症後12時間以降に測定した患者の平均値は、DALが40.43、PALが20.01で、いずれも、12時間未満に測定した群と有意な差がなかった。しかし、PAL+では9.13、INLでは5.95と、12時間未満群に比べ、有意に低値だった。なお、CNLでは10.18とやや増えていたが有意差は認められなかった。

 これらの結果は、脳梗塞の発生後、梗塞の中心部では乳酸が高度に蓄積し、しかも12時間以上にわたって滞留すること、細胞死を免れるとされるペナンブラ領域やその外側の正常領域では、発症から数時間以上を経過すると、乳酸が排出される可能性を示している。

 Karaszewski氏は、「MRスペクトロスコピーによる非侵襲な測定で得られる発作時の脳内乳酸濃度は、脳梗塞の進展予測に有用と考えられ、現在、研究を進めている段階」と述べていた。