現在、わが国では成人の約3人に1人が糖尿病または糖尿病予備軍とされ、罹患数は依然増加の一途をたどっている。こうしたなか、糖尿病が脳卒中の危険因子となることが明らかとなり、脳卒中診療に際し糖尿病のコントロールが重要な課題となっている。

 2010年4月16日に盛岡グランドホテルで開催された第35回日本脳卒中学会総会のランチョンセミナーにおいて、NTT東日本札幌病院の吉岡成人氏は2型糖尿病における進行性の膵β細胞機能低下など、病態の特徴を明らかにし、診断後早期からの厳格な血糖コントロールの重要性を強調するとともに、各種経口血糖降下薬の位置づけ、ならびにSU薬の有用性などについて講演を行った。

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 2型糖尿病においては、診断された時点から血糖値はもちろん、血圧や脂質を含めた総合的な管理が、細小血管障害ならびに大血管障害の抑制につながることが示されている。糖尿病の治療開始時点でしっかり治療することは、その後の大血管障害を有意に抑制しうることが示唆され、これはMetabolic MemoryあるいはLegacy Effectによるものと説明されている。

 最近は、Metabolic MemoryあるいはLegacy Effectの本質をより明確に表現した“Bad Legacy Effect”あるいは“Negative Legacy Effect”という呼称も提唱されている。吉岡氏は、「2型糖尿病の治療は、診断直後から血糖を十分に下げ、維持することが理想的である。しかし、現実には治療中断や奏効しなくなる例が存在して必ずしも適切なコントロールが行われないことがあり、劣悪なMetabolic Memoryが蓄積して合併症のリスクが増大する。コントロール不良期間の長期化がBad Legacy EffectあるいはNegative Legacy Effectとして記憶されてしまうことを考えると、早期の徹底的な血糖コントロールが重要である」と述べた(図)。

 また吉岡氏は、2型糖尿病ではβ細胞のアポトーシスが増加する一方、β細胞のサイズや容量の増大は起こらないことから、「2型糖尿病においては、その自然史として膵β細胞機能の低下は必至である」と指摘する。このことから、膵β細胞からのインスリン分泌を増加させるとともに、膵α細胞からのグルカゴン分泌を抑制して血糖降下作用を示すインクレチン関連薬に期待が寄せられている。しかし、米国糖尿病学会(ADA)と欧州糖尿病学会(EASD)によるコンセンサスアルゴリズムでは、インクレチン関連薬(GLP-1アゴニスト)は「十分に検証されていない治療法」の範疇であり、英国のNICEガイドラインでも、インクレチン関連薬はメトホルミンやSU薬の後の選択肢として位置づけられている。これらの点を踏まえて、吉岡氏は「2型糖尿病に対する経口血糖降下薬としては、SU薬とメトホルミンが基本になることが世界的なコンセンサスだと考えられる」と語った。

 SU薬は、わが国でもっとも汎用されている経口血糖降下薬だが、二次無効が多い、あるいは膵β細胞を疲弊させるのではないか、といった指摘がある。だが、わが国の『科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドライン』では、「他の系統の薬剤でも二次無効は同様に起こると推測される」と明記されており、二次無効という現象がSU薬に限らないことが示唆されている。またSU薬は、SU受容体への親和性の違いなどを背景に、種類により膵β細胞への作用に相違がみられ、例えば第3世代のグリメピリドに関しては、膵β細胞のアポトーシスの増加を報告したデータは今のところないと考えられる。

 SU薬とビグアナイド薬併用時の安全性に関する観察研究では、メトホルミンにグリベンクラミドを追加した群に比べ、メトホルミンにグリメピリドまたはグリクラジドを追加した群では死亡率が低いという結果が示された(Monami M et al.: Diabetes Metab Res Rev 22:477-482, 2006)。

 これらの事実を示したうえで、吉岡氏は「経口血糖降下薬の選択肢が拡がっているが、有効性と安全性に関する豊富なエビデンスをもつグリメピリドなどのSU薬の意義を再認識し、新しい薬剤に関しても作用特性を十分に把握したうえで、病態に応じて上手に使い分け、良好な血糖コントロールを目指す姿勢が重要である」と講演を結んだ。

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