わが国では、糖尿病人口の増加に歯止めがかかっていないのが実情である。こうした状況をふまえると、合併症の発症・進展の阻止に力を注ぐ必要性がいっそう強まっている。2009年11月3日に京都国際会館で開催された第46回日本糖尿病学会近畿地方会のランチョンセミナーにおいて、名古屋大学大学院医学系研究科糖尿病・内分泌内科学准教授の中村二郎氏は早期からの厳格な血糖コントロールの重要性を明らかにしたうえで、SU薬を中心とした経口血糖降下薬による薬物療法の実際、さらにインスリン療法の新しい展開について解説した。

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 EDIC Study、UKPDSの10年後のフォローアップ成績であるUKPDS 80において、発症後早期に血糖値を低く保つ努力が長期にわたって血管に記憶され、最終的に細小血管障害のみならず大血管障害の発症抑制にも有効であることが示された点は意義が大きい。これは、血管が高血糖に曝露されている状態を記憶してしまうため、合併症を抑えるためには高血糖が記憶されないよう、できるだけ早く高血糖を解除することの重要性を示唆している。このような概念をEDICでは“Metabolic Memory”、UKPDS 80では“Legacy Effect”と表現している。これらの成績をふまえて中村氏は「できるだけ早期に厳格な血糖コントロールを開始することが重要で、それが合併症の発症抑制につながる重要な鍵である」と指摘した。

 良好な血糖コントロールを維持するためには、多くの場合、食事・運動療法とともに適切な薬物療法が必要となる。SU薬はわが国でもっとも多く使用されている経口血糖降下薬であるが、その種類により作用に違いがあることも理解しておく必要がある。犬飼らは、SU薬内服歴のない2型糖尿病患者(HbA1c 8.5%以上)67例を対象に、グリベンクラミドとグリメピリド(アマリール(R))を5年間単独投与し、血糖コントロール状況やインスリン抵抗性およびインスリン分泌能について比較検討している。その成績によると、グリメピリド群では投与後1年以内にHbA1c が7.0%以下に低下し、以降5年間にわたりグリベンクラミド群に比べ良好な血糖コントロールが維持された(図1)。

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 また、SU薬の投与に際し体重増加がしばしば問題となるが、グリメピリド群では体重増加は見られず、グリベンクラミド群に比べBMIが低値で推移した。さらに、グリメピリド群ではインスリン抵抗性の改善も認められ、かつ5年間を通して安定したインスリン分泌が保たれていることも明らかとなった。中村氏は、「SU薬に関しては、使用に伴いβ細胞の疲弊を招くとの指摘があるが、グリメピリドについてはそのような懸念をする必要は少ないと考える」と述べた。

 インスリン療法においては、導入時点のHbA1cが高いほど目標値である6.5%未満達成率も低くなることが明らかになっており、適切なタイミングで導入することの重要性が示唆されている。しかし実際には、インスリン導入のタイミングが必ずしも適切でないようだ。たとえば、速効型インスリンは食事30分前に注射する必要があるが、患者の多くは直前に注射してしまう。そのため、“食後高血糖を抑えきれない→インスリン投与量を増やす→次の食事前に低血糖が起こる”という問題が起こっていた。この点を解決したのが超速効型インスリンで、なかでも最近登場したグルリジン(アピドラ(R))は、インスリンの吸収が遅延するといわれている肥満者を対象としたデータにおいて、投与後初期における血中インスリン濃度およびグルコース注入率も高いことが示されている。

 一方、既存の中間型インスリン製剤に関しては、作用にピークがあるために夜間低血糖を起こしやすく、また持続時間不足による早朝高血糖の懸念など、血糖コントロールが不安定になりやすい種々の要因を抱えていた。こうした点を補うべく登場したのが持効型インスリンである。グラルギン(ランタス(R))の作用動態をみるとインスリン作用の変動が少なく、ほぼ24時間にわたって作用が期待できる。

 外来では最近、経口血糖降下薬に加えて基礎インスリンを追加補充するBOT(Basal supported Oral Therapy)が広く用いられるようになった。この場合、基礎インスリンとして持効型インスリンとしてのグラルギンを用いることで、より良好な血糖コントロールが得られる可能性がある。

 中村氏は「2型糖尿病治療においては、早期から経口血糖降下薬やインスリン療法を適切に導入し、厳格な血糖コントロールを維持することが重要である。同時に血圧および脂質異常にも積極的に介入し、トータルな管理を実践して合併症の発症・進展阻止につなげていくべきである」と締めくくった。

※アマリールの詳細は添付文書(PDF)をご覧ください。