わが国で増加する糖尿病および糖尿病合併症への対策はきわめて重要な課題となっている。これまで、合併症抑制における血糖コントロールの意義を検討した大規模臨床試験の成績が多数報告されているが、得られた結果を表面的に捉えるのではなく、慎重に解釈を行って真のメッセージを読み取ることが大切である。2009年8月30日に開催された日本病院薬剤師会 関東ブロック第39回学術大会ランチョンセミナーにおいて、横浜市立大学の寺内康夫氏は一連の大規模臨床試験成績をレビューした上で、低血糖を回避しつつ厳格に血糖コントロールを行うこと、および早期から積極的に介入することの重要性とともに、SU薬の有用性などについて解説した。

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重症低血糖を回避しつつ厳格な血糖コントロールを
 大血管障害抑制における厳格な血糖コントロールの意義を検討したACCORD試験ADVANCE試験VADT試験の成績が2008年に相次いで発表された。いずれも、総死亡や心血管イベント抑制における強化療法の有意な効果は確認されず、大血管障害抑制における厳格な血糖コントロールの意義の解明は今後の課題となった。

 しかし、ACCORD試験では、HbA1cに加え、空腹時血糖値、食後2時間値のすべてに厳格なコントロール目標が定められており、目標値を達成するために強化療法群ではインスリン製剤をはじめ多系統にわたる薬剤がより多く使用されていた。寺内氏は、重症低血糖の発現が通常療法群(5.1%)に比べ強化療法群(16.2%)で大幅に高かった点に着目し、各群における「血糖コントロールと重症低血糖、および死亡増加の関係については、様々な解析結果を通じて正確に理解する必要がある」と指摘した。

 同試験における低血糖と死亡率に関するサブ解析の結果が、2009年6月に開催された米国糖尿病学会において報告された。それによると、強化療法群では、重症低血糖を経験しなかった患者の年間死亡率が1.3%であったのに対し、1回以上重症低血糖を経験した患者では2.8%と、重症低血糖経験例で死亡率が高い傾向にあったが有意な差ではなかった(ハザード比1.28)。一方、通常療法群においては、重症低血糖を経験した患者で死亡率が有意に高く(1.0% vs. 4.9%、ハザード比2.87)、重症低血糖の回避が臨床的に重要と考えられた。

 また、VADT試験は糖尿病罹病期間11.5年の患者であることを指摘し、「治療介入のタイミングと期間が予後を大きく左右する。罹病期間が長く、血糖コントロールが長期間不良であった患者の血糖を急激に改善しても総死亡の減少には結びつきにくい。予後の向上には、糖尿病が軽症で早期の段階から介入することが重要である」と述べた。

低血糖をいかに回避するか−実地臨床での工夫−
 現在、わが国では経口血糖降下薬のなかでもSU薬がもっとも汎用されている。第三世代SU薬のグリメピリドアマリール)は、新規糖尿病患者を対象とした製造販売後調査において1日1mgの投与で、平均HbA1cが半年間で7.6%から6.5%へと低下したことが報告されている。また、グリメピリドを0.5mg/日から投与を開始した別の試験ではHbA1cが7.0%以上7.5%未満の患者、7.5%以上8.0%未満の患者において、投与後4ヵ月でベースライン時からの有意な低下が確認されている(図)。

 SU薬では低血糖の問題がしばしば指摘されるが、グリメピリドに関しては、この試験においての低血糖および低血糖症状の発現はすべて投与前空腹時血糖値が120mg/dL以下の症例であることが判明している。すなわち、投与前に空腹時血糖値を評価し、適切な患者選択を行うことで低血糖を回避しつつ良好な血糖コントロールを工夫することができる。また、SU薬投与時に懸念される虚血プレコンディショニング抑制に関しても、グリメピリドは第二世代SU薬と異なり心保護的に作用することがラットの心臓を用いた検討で示されている。

 このように、SU薬のなかでもグリメピリドは、低血糖を回避する工夫が可能であり、虚血プレコンディショニング抑制に伴う心筋障害助長への懸念も払拭され、「有効性はもちろん安全面からも実地臨床で有用度の高い薬剤と言える」と寺内氏は指摘した。

※アマリールの詳細は添付文書(PDF)をご覧ください。

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