ALS(Amyotrophic Lateral Sclerosis;筋萎縮性側索硬化症)は、運動ニューロンが選択的に障害される進行性の神経変性疾患であるが、患者が初発症状として自覚する症状が多彩なため、早期の診断が難しい場合が少なくない。患者の多くは神経内科医に至るまでに他の診療科を経由しており、特に、上肢や下肢の筋萎縮のために整形外科を初診として訪れる場合が多い。上肢の筋萎縮が認められた場合、その筋萎縮が頸椎症による頸椎症性筋萎縮症なのか、あるいはALSの初期症状なのかを通常の画像所見のみで鑑別することは難しい場合があり、整形外科においては両者の鑑別が重要となる。

 頸椎症では説明されない症状、例えば球麻痺(舌の萎縮、構音障害、嚥下障害)や頸部屈筋の筋力低下、傍脊柱筋の萎縮、下顎反射の亢進などが認められれば、頸椎症との鑑別は比較的容易となる。また、筋萎縮と腱反射亢進が同一部位に見られるなど、上位と下位の運動ニューロンが1つの領域で同時に障害されている所見があれば、ALSを疑う必要がある。さらに、ALSでは一貫した症状の進行が認められるため、頸部安静などによる症状改善のエピソードが有れば、重要な鑑別のポイントとなる。

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 ALS患者が頸椎症と診断されてしまった場合、無為な外科手術が施行されてしまうという大きな問題がある。当然のこととしてALS患者に対する頸椎の手術成績は悪く、術後も症状の進行が認められる。また、診断の迷走は患者と医師との信頼関係を損なう場合があり、ALS唯一の治療薬であるリルゾールの投与開始も遅らせる。呼吸不全や嚥下障害への対応が後手にまわった場合には、患者や介護者である家族に非常な負担を強いることともなる。ALS患者の予後およびQOLの改善のためにも、できるだけ早期の診断が求められているのである。

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