福永秀敏氏は、国立病院機構 南九州病院に赴任された昭和59年から25年間、ALS(Amyotrophic Lateral Sclerosis;筋萎縮性側索硬化症)や筋ジストロフィーなどの神経難病医療に携わってこられた。運動ニューロンが選択的に障害される進行性の神経変性疾患であるALSは、疾患の進行に伴って日常生活動作のほとんどに介護者の助けが必要となる。それでも、条件さえ整えることができるのであれば、在宅ケアこそが患者さんおよび家族にとって最も満足できる医療だと、福永氏は考え、そのためのシステム構築と人材の育成に尽力してこられた。第27回日本神経治療学会総会において、その福永氏から、これまでの経験から得られた実践的なメッセージが参加者に披瀝された。

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 福永氏は、告知から入院あるいは在宅でのケアなどのさまざまな面において難しい問題が横たわる神経難病治療に取り組んできたこと、そして長期的な在宅ケアを始めたことには、患者さんとのきっかけ(縁)と共感によるところが大きかったという。2年以上にわたって母子3人で24時間の胸押し補助呼吸を行っていた一人のALS患者さんとの出会いは、おそらく日本で初めての在宅での体外式陰圧人工呼吸器の使用につながり、また夫が一人で妻の介護にあたっていたALSの在宅ケアは、ホームヘルパーによる痰の吸引を認めてくれるよう、当時の厚生省に働きかけることへとつながったと語った。

 その上で、ALSの特定疾患医療受給者数が右肩上がりの増加を続けている現状にも言及した。この背景には、高齢化と、呼吸・栄養管理などの進歩による延命、治療薬リルゾールによる生存期間の延長(アメリカでの未発表のデータなどから)があるものと考えられる。今後はさらに、尊厳死をはじめとした終末期医療の問題についても、開かれた議論を経て、一定のコンセンサスが得られるべきときがきていると、講演を締めくくった。

 まだ多くの課題が山積する神経難病医療の臨床現場で、福永氏は今も、患者さんと向き合いながら、患者さんの人生を意義ある豊かなものにするための援助を続けている。

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