最近の研究では、糖尿病それ自体が血管性認知症のみならず、アルツハイマー病の危険因子であることが明らかになっている。また、少子高齢化の影響により高齢者のみの世帯が増えていることも、自己管理を難しいものにしており、高齢者の糖尿病治療は臨床上の重要な課題である。2009年5月7日に開催された第95回日本消化器病学会総会のランチョンセミナーにおいて、神戸大学大学院医学研究科内科学講座老年内科学分野の横野浩一氏は、「超高齢社会における糖尿病治療 −特に糖尿病と認知症との関連について−」と題して講演を行った。

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加齢に伴う「インスリン抵抗性」と「インスリン分泌不全」を踏まえた治療を考慮
 加齢に伴う種々の変化、例えば体組成の変化や膵β細胞におけるミトコンドリア機能の低下、また運動量の低下や糖質過剰な食事などを背景に、高齢者においては、遺伝因子の有無にかかわらず、加齢自体が「インスリン抵抗性増大」と「インスリン初期分泌の遅延・低下」を招くことがわかってきた。このような高齢者糖尿病の病態を踏まえ横野氏は、「加齢を背景にインスリン抵抗性とインスリン分泌不全の両方が惹起されていることを考えると、SU薬のなかでもグリメピリド(アマリール)はインスリン分泌促進作用に加え、インスリン抵抗性改善作用を併せ持っていることから、高齢者糖尿病に対して有用な選択肢になる。またグリメピリドはインスリン分泌促進作用が第二世代のSU薬に比べてマイルドであるため使いやすい薬剤といえる」と指摘した。

合併する認知機能障害の早期発見と早期治療に努めることも大切
 2型糖尿病と認知症との関連については多くの疫学研究が報告されており、糖尿病が認知症発症のリスク上昇に関与することが示されている。横野氏らの検討でも、非糖尿病群に比べ糖尿病群において有意な認知機能低下が認められ(p<0.05)、さらに糖尿病患者における認知機能障害の表現型は必ずしも早期認知症と同様ではないことが示唆された。

 糖尿病における認知機能障害の発症機序は複雑で、その成因や病態は多様である。現在のところ、糖尿病は、他の生活習慣病の合併や遺伝的素因と合わさって(1)動脈硬化病変を基盤とする脳血管病変の進展、(2)糖毒性による微小血管病変、(3)インスリン抵抗性によるアミロイド代謝の障害、などをもたらす。そして、これらが相互に作用して脳の加齢変化、脳血管病変、アルツハイマー病を進展させ、認知症発症に影響すると考えられている(図)。

 最後に横野氏は、「糖尿病のよりよい治療と管理のためには、高齢者の特性を踏まえた糖尿病治療を実践するとともに、合併する認知機能障害の早期発見と早期治療に努めることも大切である」と述べ、講演を結んだ。

糖尿病における認知症の発症機構

図 糖尿病における認知症の発症機構。Biessels GJ et al. Lancet Neurology :5 :64-74, 2006より作図

※アマリールの詳細は添付文書(PDF)をご覧ください。