入院患者における尿路感染症は、泌尿器科に限らず各診療科で高頻度に遭遇する感染症である。近年、社会の高齢化に伴い尿路感染症の発症リスクはさらに高まっている。エビデンスに基づく感染症治療が確立されている米国にて感染症科フェローシップを修了された自治医科大学附属病院臨床感染症センター・感染症科 准教授の五味晴美氏にインタビューし、抗菌薬治療のロジックについて解説頂いた。(聞き手:田中よしみつ=メディカルライター)



 入院患者に発症する感染症のなかでも尿路感染症は、その4割以上を占めるとされ(CDC;米国疾病予防管理センター)、頻度が高い。最大のリスクファクターは尿路カテーテル留置例とされている。特にわが国においては、米国と比べ平均在院日数が長い上、高齢者の増加によって尿路カテーテルの留置例が増加傾向にあり、今後さらに注意すべき感染症といえる。

 入院患者に感染症が疑われた場合は、その鑑別が必要となる。米国では1stステップとして、「Fever workup」(図1)が、最低限実施すべきこととして徹底されている。これらは、どの部位に、どの起因菌によって感染症が発症しているのかを特定するためのものである。

 尿路感染症と診断された場合、まずはエンピリックに抗菌薬を投与していくことになる。その場合、代表的な起因菌である緑膿菌を必ずカバーする抗菌薬を選択する必要がある。また症例により、腸球菌をカバーする抗菌薬の併用が必要な場合もある。具体的な注射用抗菌薬としては、β-ラクタマーゼ阻害薬配合ペニシリン系薬のタゾシンTAZ/PIPC)、第3・4世代セフェム系薬などが適応となる。本来カルバペネム系薬は最後の切り札として温存されるべき薬剤である。しかしながら、わが国においては、その繁用により緑膿菌を中心に感受性の低下が指摘されている。近年、多剤耐性緑膿菌(MDRP)などの耐性菌の出現が問題となっており、尿路に起因するとの報告も多い。耐性菌の発現を抑制するためには、カルバペネム系薬を切り札として持ちつつ同等の抗菌スペクトラムをカバーする薬剤を先に選択することや、起因菌が特定された時点で、その菌による尿路感染に対する標準治療薬、より狭域な抗菌薬に変更することが重要となる。

 自治医科大学では、「ビデオオンデマンド・サービス」(図2)をインターネット上で提供している。感染症に関するコンテンツも豊富で、関心をお持ちの先生方に一度ご覧頂ければと考えている。(詳細PDFはこちら