第81回日本感染症学会総会において、東北大学加齢医学研究所抗感染症薬開発研究部門教授の渡辺彰氏は、注射用ニューキノロン系薬の特性を踏まえ、その使用法に関する発表を行った。

 日本呼吸器学会が発表した院内肺炎ガイドラインは、「当初から広域で強力な抗菌薬を十分量、短期間投与し、かつ施設における抗菌薬の選択をできるだけ偏りのない多様なものとする」ことをうたっている。同ガイドラインの検証試験によれば、重症化が懸念される緑膿菌分離症例に対するカルバペネム系薬の有効率が67.6%であるのに対し、第3、4世代セフェム系薬の有効率は36.4%であり、あえてセフェム系薬を選択する必要性は少ない。また、β-ラクタム系薬に偏った抗菌薬の使用が耐性化を拡大させる。したがって、多様な薬剤を選択肢に加えるという視点からも、作用機序の異なる注射用ニューキノロン系薬を治療薬群に組み込むことは正しい選択と考えられる。

 また、ニューキノロン系薬(シプロフロキサシン:CPFX, パズフロキサシン:PZFX)に耐性の緑膿菌に対するカルバペネム系薬の耐性率は53.5%に下がる一方、カルバペネム系薬に耐性の緑膿菌に対するニューキノロン系薬PZFXの耐性率も26.7%に下がる。このようにニューキノロン系薬とカルバペネム系薬は交差耐性が少なく、双方の無効例に対して有効性を示す相互補完的な性格を示しており、両者は同等のポジションで 使用されるべき薬剤といえる(図1)。

 ニューキノロン系薬は、欧米では12.4%に用いられ、カルバペネム系薬と同等のシェアを得ている。しかし日本ではわずか数%にすぎず、β-ラクタム系薬が大部分を占める。これは、日本では注射用ニューキノロン系薬の承認審査の過程で、初期治療薬としての使用が制限されたことにも理由がある。しかしながら、各種ガイドラインにおいては注射用ニューキノロン系薬が初期治療として推奨されている(図2)。

 こうした実情等を受け2006年、注射用キノロン系薬の初期治療薬としての使用が認められた。その適応は、危険因子を有する患者や、難治化が危惧される患者である。またその効果は濃度依存性、PK/PDパラメータであるAUC/MIC、Cmax/MICと相関することから、安全性を考慮したうえで、高用量を短期間で投与することが必要である。注射用ニューキノロン系薬は、PZFXを筆頭に優れた組織移行性を示し、その点からも有効率の向上と、耐性菌発現の抑制が期待される(詳細pdfファイルはこちら)。