4月7日に開かれた第27回日本医学会総会ランチョンセミナー(大日本住友製薬株式会社 提供)において、福島県立医科大学副理事長・病院長の菊地臣一氏は腰痛診断時の重大疾患の見逃しに焦点を当て、それを回避するためには問診と理学所見の重要性を指摘した。

 腰痛を主訴として来院する患者は多いが、その中には最終診断で解離性腹部大動脈瘤や子宮癌転移による腰痛であったケースなど、整形外科領域以外の疾患の推移による腰痛症状が分かった例があるとし、腰痛の症状や詳細な問診による患者背景などから整形外科疾患以外の様々な可能性をリストアップする必要があると述べた。そして、腰痛の背景に潜む、あらゆる可能性を排除するのが理学所見であるとした。

 腰痛診断の際、注意すべき点として菊地氏は画像検査への過信を挙げた。特に骨盤の単純X線撮影は誤診を起こしやすく、MRIやCTは重篤疾患の診断能は高いがコスト面で患者負担が重いこと、放射線被曝による発癌の危険性は日本が世界で最高であるなど、幾つかのデメリットがあるとし、菊地氏は「腰痛における画像診断の役割は、あくまで理学所見を再確認する手段」と話した。

 一方、患者本人と医師との間には、“腰痛”の受け止め方にも違いがあり、「患者側は、重篤になるまで治療に行かない、治療よりも痛みの除去を希望している、孤独を癒すために受診するなどの傾向が見られる」と述べ、そこで、「診療の視点は“病気”から“病人”へと変換してきており、“Cure”だけでなく“Care”も重視されるようになってきた。腰痛も例外ではなく、このような患者の受診の目的を理解しつつ診療に当たるためには、患者との対話を通して治療を決定していく『Narrative Based Medicine(NBM)』が重要」と菊地氏は提唱した。医師はScienceを重視するが、患者にとっては目の前の医師の積極的な共感が病気と闘う意欲を与える、と述べ、講演を締めくくった。