米Merck Sharp & Dohme CorpのY. Qiu氏

 なぜ医師は、AACE/ACEガイドラインに沿った糖尿病治療を行わないのか――。例えば、AACE/ACEガイドラインは、治療前のHbA1c値が7.6-9%の糖尿病患者に対してはメトホルミンをベースとした血糖降下薬2剤で治療を開始するよう推奨している。しかし、実際の臨床では、ガイドラインの推奨を採用しない医師がいるのも事実。その理由を検証したところ、「単剤療法は血糖管理を改善するのに十分」「単剤療法は2剤療法より扱いが簡単」「単剤療法と生活習慣の変更で十分」などという医師の考え方あるいは信念が浮かび上がった。米Merck Sharp & Dohme CorpのY. Qiu氏らが、12月6日までメルボルンで開催されていた世界糖尿病会議2013IDF-WDC2013)で報告した。

 調査対象は、米国のプライマリケアを担当する医師(PCPs)と糖尿病の専門医。医師1人当たり4人の患者を目標に、2型糖尿病の診断時にHbA1c値が7.6-9%であった患者で、メトホルミンの単剤療法で治療を始めた患者のカルテの審査を依頼した。

 また医師には、あらかじめ22項目の治療選択の理由を用意した上で、メトホルミンの単剤療法で治療を始めた理由を選択してもらい、5点制Likertスコア(「1」が最も不適切、「5」が最も適切)を用いて、それぞれの理由がどれだけ適切かどうかを評価してもらった。

 適切な理由(50%以上の医師が「4」あるいは「5」と評価した理由と定義)を同定し、平均スコアをPCPsと専門医の間、若年患者(18-64歳)と高齢患者(65歳以上)の間で混合効果モデルを用いて比較した。

 その結果、平均HbA1c値が8.14%の3009人の若年患者と2986人の高齢患者について、カルテの審査と選択理由の評価が、1235人のPCPsと290人の専門医から提出された。

 適切とされた理由をみると、スコアの高い上位4項目は、メトホルミン単剤療法と2剤療法に対する医師の考え方と信念に関係していた。具体的には、「メトホルミン単剤療法は血糖管理を改善するのに十分である」(理由1、平均スコア[標準偏差]:3.66[1.1])、「単剤療法は2剤療法より扱いが簡単である」(理由2、同3.53[1.2])、「単剤療法と生活習慣の変更(例;運動と食事の改善)は高血糖管理に十分であると信じる」(理由3、同3.47[1.1])、「2剤療法を考慮する前に単剤療法を勧める」(理由4、同3.75[1.1])となった。

 患者の血糖値に対する医師の見方に関係する「患者は軽度の高血糖である」(同3.27[1.1])という理由も、適切と評価された理由の1つだった。

 医師の群間で比較したところ、上記4つの理由はすべて、PCPsの方が専門医よりもスコアが有意に高かった(理由1:3.70 vs. 3.51、P<0.001。理由2:3.59 vs. 3.25、P<0.001。理由3:3.52 vs. 3.21、P<0.001。理由4:3.81 vs. 3.43、P<0.001)。

 患者の年齢別にみると、上記の理由1、3、4において、高齢患者よりも若年患者におけるスコアが有意に高かった(理由1:3.69 vs. 3.52、P<0.001。理由3:3.41 vs. 3.31、P<0.001。理由4:3.72 vs. 3.53、P<0.001)。

 これらの結果から演者らは、「ガイドラインとの不一致の理由は、医師の治療に対する考え方と信念に基づいたものだった。また、HbA1c値8.0%超を『軽度』とする見方がある点も不一致の理由の1つだった」と結論した。その上で、このようなガイドラインの推奨と実臨床間のギャップを明らかにする知見を積み重ねることは、「2型糖尿病治療の質を向上させるという点で意義があること」と指摘した。