オーストラリアUniversity of AdelaideのTongzhi Wu氏

 DPP-4阻害薬の血糖降下作用は、小腸におけるグルコースなどの栄養素の吸収割合と、インクレチンのGLP-1刺激の強さに依存している可能性が示された。オーストラリアUniversity of AdelaideのTongzhi Wu氏らが、12月2日から6日までメルボルンで開催されていた世界糖尿病会議2013IDF-WDC2013)で発表した。

 インクレチンのGLP-1やGIPは、食事摂取に伴い、血糖依存的に膵β細胞からのインスリン分泌を促進する。GLP-1は膵α細胞からのグルカゴン分泌を抑制し、血糖値を低下させる。また、GLP-1は、GIPよりも強力なインスリン分泌促進作用があることが報告されている。

 そこで今回Wu氏らは、2型糖尿病患者において、GLP-1およびGIPの分解を阻害することで濃度を維持し血糖値を低下させるDPP-4阻害薬は、GIPよりもGLP-1のバイオアベイラビリティ(生物学的利用率)に依存すると仮説を立て、検証した。

 対象は、2型糖尿病の入院患者(男性12人、年齢27.3歳、BMI 22.5kg/m2)、やせ型の健常者(男性12人、年齢38.8歳、BMI 34.5kg/m2)、肥満型の健常者(男性12人、年齢63.7歳、BMI 29.9kg/m2)とした。

 各対象の中でシタグリプチン100mgを投与するシタグリプチン群とプラセボを投与するプラセボ群を比較し、シタグリプチンの血糖降下作用を評価した。投与30分後から、2kcal/分の速度で120分間、十二指腸内にグルコースを注入した。血液サンプルは、シタグリプチンまたはプラセボを投与した時から、定期的に9回採取した。

 活性体であるインタクトGLP-1を測定し、得られた濃度曲線下面積(AUC)をみると、いずれの対象においてもシタグリプチン群の方が有意に大きかったが、両群の差は大きくなかった(肥満型健常者はP<0.001、他はP<0.05)。一方、インタクトGIPはいずれの対象でもシタグリプチン群の方が有意に高値で、両群間の差も大きかった(3対象ともP<0.001)。

 血漿グルコース濃度のAUCをみると、やせ型健常者と肥満型健常者において有意にシタグリプチン群がプラセボ群を下回ったが(順にP=0.001、P=0.004)、2型糖尿病患者では差はなかった。

 血清インスリン濃度のAUCは、やせ型健常者と肥満健常者においてシタグリプチン群が有意に上回り、インスリン分泌能が強化されていた(順にP=0.002、P<0.05)。2型糖尿病患者でも同様の傾向がみられたが、有意ではなかった(P=0.050)。

 インスリンとグルコースのAUC比をみると、やせ型健常者と肥満型健常者においては有意にシタグリプチン群がプラセボ群を上回り(順にP<0.001、P=0.032)、2型糖尿病患者でも同じような傾向がみられた(P=0.065)。

 血漿グルカゴン濃度については、いずれの対象でも有意差は認めなかった。

 これらの結果からWu氏は、「グルコースを2kcal/分の割合で十二指腸に注入した場合、シタグリプチンは血漿インタクトGIPを大きく増加させたが、インタクトGLP-1はそれほど増やさず、血漿グルカゴン濃度への影響は認められなかった。また、シタグリプチン投与によって、やせあるいは肥満の健常人では、インスリン分泌が強化され、2型糖尿病患者においても比較すると効果は小さいものの、血糖降下作用がみられた」とまとめた。

 さらに、これまでの知見も踏まえ、「2型糖尿病患者では、GIPによるインスリン分泌促進作用が低下していると考えられる。また、DPP-4阻害薬の血糖降下作用は、グルコースが小腸に吸収される割合やGLP-1刺激の強さに依存しているのではないか」との見解を同氏は示した。