オーストラリアQueensland University of TechnologyのN.Pritchard氏

 神経障害を来していない1型糖尿病患者において、角膜共焦点顕微鏡角膜神経線維長CNFL)や角膜の感覚閾値CST)を3年間計測し、発症群と非発症群の臨床パラメーターを比較検討したところ、神経障害を発症する1型糖尿病患者は、CNFLが短縮する可能性が高いことが示された。この結果から、角膜の検査が糖尿病患者における神経障害のスクリーニングとして有用であることが示唆された。オーストラリアQueensland University of TechnologyのN.Pritchard氏らが、12月2日から6日までメルボルンで開催されていた世界糖尿病会議2013IDF-WDC2013)で発表した。

 角膜神経の喪失は、神経障害のマーカーおよび予測因子となる可能性が示されている。今回Pritchard氏らは、糖尿病性神経障害発症率を予測する臨床パラメーターを検討するため、1型糖尿病患者について3年間の観察研究を行い、神経障害を発症した患者と発症しなかった患者に分けて、ベースライン時の臨床パラメーターを比較した。

 対象は、14歳から75歳の1型糖尿病患者とした。角膜の疾患や外傷、角膜手術の既往、他の全身性疾患、糖尿病以外に起因する神経障害、足の潰瘍や感染などがない105例を登録した。

 4年間の長期的な観察研究で、3年間の追跡調査を実施した。CNFL、CSTを角膜共焦点顕微鏡で毎年計測し、神経障害の対策と、リスク因子の検討を行った。神経障害の評価には、トロント基準(神経障害は、神経伝達速度が正常値の10パーセンタイル未満で、神経障害の障害スコアが3以上または糖尿病性神経障害の症状スコアが0超である場合と定義)を使用した。

 3年間の観察を継続できたのは84例で、このうち8%にあたる7例が神経障害を発症した。発症群(7例、ベースライン時の平均年齢54歳、糖尿病平均罹患歴18年、男性3例)、神経障害を発症しなかった非発症群(77例、44歳、罹患歴18年、男性40例)に分け、2群間でCNFLとCSTを比較した。喫煙歴や飲酒歴、胴囲、HbA1c値などは両群で有意差はなかった。

 比較検討の結果、発症群におけるベースライン時のCNFLは、非発症群に比べ、オッズ比(OR)が0.82(95%信頼区間[95%CI]:0.68-1.00)と短かった。CSTも、非発症群に対し発症群のORは0.81(95%CI:0.13-5.23)と低かった。ただし、いずれも有意差は認められなかった。

 2群間のベースラインの臨床パラメーターを検討すると、冷感覚閾値(OR:0.81、95%CI:0.78-0.99、P=0.017)と腓骨神経伝導速度(OR:0.89、95%CI:0.80-1.00、P=0.002)、単一フィラメント(OR:0.38、95%CI:0.14-1.03、P<0.001)、仰臥位拡張期血圧(OR:0.85、95%CI:0.76-0.95、P=0.008)については、非発症群で有意に高かった。温感覚閾値のORは1.22(95%CI:1.01-1.48、P=0.314)と、有意差は認めなかった。振動覚閾値のみ、ORが1.03(95%CI:0.99-1.07、P=0.006)で、発症群で有意に高かった。

 CNFLの推移として、2年目には発症群が非発症群の長さを上回ったが、3年目には非発症群よりも発症群のCNFLの方が、やや短くなっていた。CSTは、ベースライン時から3年目まで、一貫して発症群の方が低かった。

 これらの結果からPritchard氏は、「神経障害を発症する1型糖尿病患者は、CNFLが短縮する可能性が高い」とまとめ、「角膜検査は、神経障害を予測するツールの1つとして有用だった」と結論した。