日本赤十字社医療センターの小島雄一氏

 2型糖尿病患者にDPP-4阻害薬シタグリプチンあるいは速効型インスリン分泌促進薬ナテグリニドを投与し食事負荷試験を行ったところ、血糖関連指標については両薬に差はなかったものの、空腹時トリグリセリド(TG)値やアポリポ蛋白B48(Apo-B48)といった脂質関連パラメーターはシタグリプチンでのみ改善することが示された。日本赤十字社医療センターの小島雄一氏らが、12月2日から6日までメルボルンで開催中の世界糖尿病会議2013IDF-WDC2013)で発表した。

 高TG血症は冠動脈疾患の独立した危険因子であることが、日本人患者を対象とした疫学研究で示されている。ナテグリニドは動脈硬化のサロゲートマーカーである頸動脈内膜中膜肥厚(IMT)を抑制する。また、2型糖尿病患者が合併することが多い食後高脂血症(PPHL)は、血管壁にカイロミクロンレムナントを蓄積させることで動脈硬化を進展させるのではないかと考えられている。シタグリプチンはPPHLに対する有用性が報告されているが、このPPHL改善作用が、食後血糖の抑制によるものなのか、DPP-4阻害によるインクレチンの分泌増加によるものなのかは明らかになっていない。

 そこで、シタグリプチンとナテグリニドの脂質代謝への作用を比較した。対象は、2010年7月から2011年6月まで同センターに通院していた20歳以上の2型糖尿病患者とし、HbA1c値6.5〜8.0%、空腹時血糖値7.77mmol/ L(140mg/dL)未満といった条件を満たした患者を登録。妊婦などのこれらの薬剤の禁忌対象者、重度の肝・腎不全患者などは除外した。

 登録患者を、4週間のウォッシュアウト期間後に、シタグリプチン50mgを1日1回(朝食前)投与するシタグリプチン群(年齢64歳、男性15例、女性5例)とナテグリニド90mgを1日3回(各食事前)投与するナテグリニド群(66歳、12例、4例)に無作為に割り付け、3カ月間にわたり継続投与した。投与開始時と3カ月後に食事負荷試験を行い、食後1時間後と3時間後に血液サンプルを採取した。降圧薬や脂質降下薬の薬剤やその投与量は試験中変更しなかった。

 その結果、空腹時TG値はシタグリプチン群において1.26mmol/L(112mg/dL)から1.09mmol/L(97mg/dL)に有意に低下した(P<0.05)。ナテグリニド群も1.54mmol/L(136mg/dL)から1.11mmol/L(98mg/dL)に低下したが、有意差は認められなかった。また、Apo-B48の薬物血中濃度-時間曲線下面積(AUC)は、シタグリプチン群は2.48g/L/時から1.94g/L/時へと有意に低下したが(P<0.05)、ナテグリニド群は3.14g/L/時から2.29g/L/時と低下したものの、有意ではなかった。

 血糖関連指標はいずれも、両群とも同様に改善しており、有意差を認めなかった。例えば、HbA1c値、グリコアルブミン(GA)値、食後1時間後の血糖値は、3カ月後には両群とも有意に低下しており、1,5アンヒドログルシトール(1,5-AG)値は有意に増加していた(すべてP<0.01)。

 これらの結果から小島氏は、「血糖コントロールに関する指標はシタグリプチン、ナテグリニドとも改善しており、両群間に有意差は認めなかった。一方、空腹時TG値やApo-B48はシタグリプチン群のみ有意に改善していた」と結論し、「2型糖尿病の治療は、単に空腹時血糖を是正する段階から、大血管合併症を予防するために食後高血糖を是正する段階に移行しつつある。今後は、脂質系の指標に対する効果を検証する研究を行う必要があると考えられる」との見解を示した。